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2025.11.12
糸リフトの失敗例から学ぶ!後悔しないためのクリニック選びと対策法

「メスを使わずに、手軽にリフトアップできるなら…」そんな期待感から、糸リフト(スレッドリフト)を検討している方は少なくないはずです。しかし、その手軽さの裏側で、「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースが後を絶たないのも事実。私自身、美容医療のコンテンツに長年携わる中で、成功して喜びに満ちる方がいる一方、理想とは違う結果に深く悩む方を数多く見てきました。

「頬がこけてしまった」「顔の表面がデコボコになった」「ひきつれ感がずっと治らない」…。こうした声を聞くたびに、糸リフトは医師の技術力と美的センス、そして患者さんとの丁寧な意思疎通が、他のどの施術よりも結果を大きく左右する、非常に繊細な施術なのだと痛感させられます。

これから、なぜ糸リフトの失敗は起こるのか、そのリアルな事例と原因を徹底的に掘り下げます。そして、数多くのクリニックや医師への取材経験から導き出した、後悔しないためのクリニック選びの極意と、カウンセリングで確認すべき具体的な質問術まで、余すところなくお伝えします。失敗例を知ることは、不安を煽るためではありません。あなたの理想を叶えるための、確かな知識という武器を手に入れるためなのです。

 

1. 糸リフトで実際に起こりうる失敗とは?

糸リフトの施術を検討する際、華やかなビフォーアフターの写真にばかり目が行きがちですが、まずは「起こりうる失敗」の全体像を冷静に把握しておくことが、成功への第一歩です。私がこれまでに見聞きしてきた失敗談は、いくつかのパターンに分類できます。

  • 見た目のデザインに関する失敗
    • 頬がこけて、やつれた印象になってしまった
    • 皮膚の表面が凸凹したり、糸のラインが筋状に見えたりする
    • 引き上げられすぎて、顔にひきつれ感や違和感が残る
    • 左右非対称な仕上がりになってしまった
  • 効果に関する失敗
    • 期待していたほどリフトアップ効果を感じられなかった
    • 施術後すぐに元に戻ってしまった
  • 医学的なリスク・副作用に関する失敗
    • 皮膚の上から糸が透けて見えたり、触ると分かる
    • 糸を挿入した部分から感染症を起こしてしまった
    • 施術後に痛みが長期間引かない
    • 糸が皮膚から飛び出してきてしまった

 

面白いことに、これらの失敗は完全に独立しているわけではありません。例えば、「効果を出すために無理に引き上げすぎた」結果、「ひきつれ」や「凸凹」が起きるというように、複数の問題が連鎖して発生することが非常に多いのです。

これから先のセクションで、それぞれの失敗がなぜ起こるのか、そのメカニズムと具体的な回避策を一つひとつ詳しく解説していきます。これらの知識は、あなたがクリニックのカウンセリングに行った際に、医師の説明をより深く理解し、的確な質問をするための強力な土台となってくれるはずです。

※関連記事:失敗しないクリニック選びの5つのポイント

2. 頬がこける・顔が凸凹になる原因と回避策

糸リフトで最も恐れられている失敗の一つが、この「頬のこけ」や「顔の凸凹」ではないでしょうか。若々しくなるために受けたはずが、逆に疲れて老けた印象になってしまう。これは絶対に避けたい結果ですよね。この問題の根源は、ほとんどの場合、糸を挿入する「層(深さ)」と「デザイン」の見極めミスにあります。

顔の皮膚は、表面から「表皮」「真皮」「皮下脂肪」「SMAS(スマス)筋膜」「表情筋」といったように、ミルフィーユのような複雑な層構造になっています。糸リフトは、この層の中の適切な位置に糸を通して組織を引っ掛けて引き上げる施術です。

頬がこけてしまう主な原因は、もともと頬の脂肪が少ない方に対して、脂肪を移動させるような引き上げ方をしてしまったり、こめかみ方向へ強く引き上げすぎたりすることです。これにより、本来ふっくらと見せたい頬の中心部が削げ落ちたような印象になってしまいます。

一方で、顔が凸凹になるのは、糸を挿入する層が浅すぎることが大きな原因です。皮膚のすぐ下にある浅い層に糸を通してしまうと、引き上げた際に皮膚表面だけが引っ張られ、凹みや筋状の線となって現れてしまいます。これは、例えるなら、布の裏側から太い糸で縫い目を見せてしまうようなもの。非常に未熟な技術と言わざるを得ません。

では、どうすればこの失敗を回避できるのでしょうか。

鍵となるのは、医師が顔の解剖学を熟知し、一人ひとりの脂肪のつき方や骨格を正確に診断できるかという点です。私の取材経験上、優れた医師はカウンセリングの際に、ただ顔を見るだけでなく、実際に手で触れて脂肪の厚みや皮膚の柔らかさを念入りに確認します。そして、「あなたの場合は、この層にこの種類の糸を入れるのが最適です」「頬のこの部分は脂肪が少ないので、引き上げる角度を調整して、こけないようにデザインします」といった、極めて具体的な説明をしてくれます。

回避策はシンプルです。カウンセリングで、医師があなたの顔をどのように分析し、どのようなデザインで施術しようとしているのか、そのロジックを丁寧に説明してくれるかどうかを、厳しく見極めること。このプロセスを省略するようなクリニックは、避けるのが賢明と言えるでしょう。

3. ひきつれ感が治らない・不自然な仕上がり

「糸リフトを受けたのが、周りにバレバレ…」そんな事態は避けたいものです。施術後の「ひきつれ感」や、笑った時の「不自然なシワの寄り方」は、いかにも「何かやりました」という印象を与えてしまう代表的な失敗です。

この問題の主な原因は、大きく分けて二つ考えられます。

一つは、単純に糸による引き上げが強すぎること。特に、施術直後は麻酔の影響や腫れもあり、多少のひきつれ感は誰にでも起こり得ます。しかし、これが数週間、数ヶ月経っても改善しない場合、それはデザイン上の問題である可能性が高いです。効果を過剰に求めるあまり、皮膚や皮下組織を無理やり引っ張り上げすぎると、表情を動かした時に皮膚がついてこられず、不自然なひきつれが生まれてしまうのです。

もう一つの、より根本的な原因は、表情筋の動きを無視したデザインです。私たちの顔には、笑ったり、話したり、怒ったりする際に動く、たくさんの表情筋があります。優れた医師は、糸をどの方向に、どのくらいの強さで入れるかを決める際に、患者が普段どのような表情をするのか、筋肉がどう動くのかまで計算に入れます。

私が以前、ある名医に取材した際に聞いた言葉が忘れられません。「僕たちは、真顔の時だけ綺麗な顔を作っているんじゃない。笑った顔、話している顔、その人らしい表情が、より魅力的になるようにデザインするんだ」と。彼はカウンセリングで、患者さんと雑談をしながら、その人の笑い方の癖や表情の動きを注意深く観察していました。

この失敗を回避するためには、カウンセリングの場で、あなたの「なりたいイメージ」をできるだけ具体的に伝えることが重要です。そして、医師に対して、「笑った時や話した時に、不自然に見えませんか?」という質問を必ず投げかけてみてください。

その問いに対して、「大丈夫です、自然に仕上げますよ」と抽象的に答えるだけでなく、「あなたの場合は、この筋肉の動きがあるので、糸をこの方向に入れると笑った時に少し不自然な線が出る可能性があります。なので、こちらの方向からアプローチしましょう」といったように、リスクとそれを回避するための具体的なプランを提示してくれる医師こそ、信頼に値するプロフェッショナルです。

4. 効果がなかった、すぐ元に戻ったというケース

高額な費用をかけたにもかかわらず、「全く変化がなかった」「数ヶ月で元に戻ってしまった」というのも、非常に悲しい失敗例です。これは、施術そのもののクオリティというよりは、施術前の「適応の見極め」と「期待値の調整」に問題があるケースがほとんどです。

効果が感じられない原因として、まず考えられるのは、糸リフトの適応ではない、あるいは糸リフトだけでは不十分な状態であった可能性です。例えば、たるみが非常に強く、皮膚の余りも多い方の場合、糸だけで引き上げるには限界があります。このようなケースでは、切開リフトのような、より根本的な治療が必要になるかもしれません。にもかかわらず、「切らない施術」であることだけを強調して糸リフトを勧めてしまうのは、クリニック側の問題と言えるでしょう。

また、糸の種類や本数が、その人のたるみの状態に対して不十分だったという可能性も考えられます。予算を抑えたいがために少ない本数で施術した結果、リフトアップ効果が弱く、持続期間も短くなってしまうことは珍しくありません。

私が多くのクリニックで感じるのは、成功しているクリニックほど、患者さんの希望に対して「できないことはできない」とはっきり伝えるということです。「あなたのたるみの状態ですと、糸リフトではおそらく30%程度の改善しか見込めません。その上で施術を受けますか? それとも、別の選択肢を考えますか?」というように、現実的な効果の限界と、持続期間の目安を正直に話してくれます。

この失敗を回避するためには、カウンセリングで「」を語るだけでなく、「現実」を確認することが不可欠です。

  • 「私のこのたるみは、糸リフトでどのくらい改善が見込めますか?」
  • 「この本数と種類の糸で、効果はどれくらい持続すると考えられますか?」
  • 「もし効果がなかった場合、どのようなアフターフォローがありますか?」

これらの質問を投げかけ、曖昧な返事ではなく、具体的な数字や期間、そして保証制度などについて明確な回答が得られるかどうかを確認しましょう。効果を過剰に約束するクリニックよりも、リスクや限界を誠実に説明してくれるクリニックの方が、結果的に満足度は高くなるものです。

※関連記事:効果を長持ちさせるアフターケアの秘訣

5. 糸が透ける、感染症などのリスク

見た目のデザインや効果とは別に、純粋に医学的な合併症として起こりうるのが、「糸が透けて見える」「感染症を起こす」といったトラブルです。これらは頻度としては稀ですが、一度起こると心身ともに大きな負担となるため、リスクとして必ず知っておく必要があります。

糸が透けて見える、あるいは触ると分かるという現象は、皮膚が非常に薄い方に対して、太すぎる糸を使用したり、挿入する層が浅すぎたりした場合に起こりえます。特に、目の下や頬の高い位置など、皮膚が薄く脂肪が少ない部位は注意が必要です。これを防ぐには、医師が患者の皮膚の厚さを正確に診断し、それに合った太さや種類の糸を選択するスキルが求められます。

そして、最も避けなければならないのが感染症です。糸を挿入する際、針を刺した小さな穴から細菌が入り込み、炎症や化膿を引き起こすことがあります。原因のほとんどは、施術時の衛生管理の不徹底にあります。

  • 施術器具が完全に滅菌されていない
  • 医師やスタッフの手指消毒が不十分
  • 施術室の衛生環境が悪い

これらは、美容医療を行うクリニックとして、あってはならないことです。私がクリニックを取材する際に密かにチェックするポイントの一つが、院内の清掃状況や、スタッフの身だしなみです。どんなに華やかな内装でも、隅にホコリが溜まっていたり、スタッフの白衣が汚れていたりするような場所は、衛生管理への意識が低いと判断せざるを得ません。

この深刻なリスクを回避するためには、以下の点を確認することが有効です。

  • クリニックの衛生管理体制について質問する: 「器具の滅菌はどのような方法で行っていますか?」といった質問に、よどみなく答えられるかは一つの指標になります。
  • 院内の清潔感を自分の目で確かめる: カウンセリングに訪れた際に、待合室だけでなく、パウダールームや廊下なども観察してみましょう。清潔感は、クリニック全体の姿勢を映す鏡です。
  • 術後の抗生剤の処方などを確認する: 感染予防のために、術後に内服薬(抗生剤や痛み止め)が処方されるのが一般的です。こうしたケアについても、事前に説明があるかを確認しましょう。

手軽なイメージのある糸リフトですが、体内に異物を入れる医療行為であることに変わりはありません。価格の安さだけで選ぶのではなく、安全性を最優先する姿勢を忘れないでください。

6. 名医を見極めるためのクリニック選びの極意

さて、ここまで様々な失敗例とその原因を見てきました。これらの失敗の多くは、最終的に「医師選び」に行き着くことがお分かりいただけたかと思います。では、どうすれば信頼できる「名医」を見極めることができるのでしょうか。私が考える、クリニック選びの極意は以下の通りです。

  1. 症例数の多さだけでなく「質」を見る
    公式サイトやSNSで症例写真を見る際は、その数だけでなく、一つひとつの仕上がりの質に注目してください。あなたが良いと感じる「美的センス」と、その医師のセンスが合っているかは非常に重要です。不自然に引き上げすぎている症例が多いと感じるなら、その医師とは合わない可能性が高いでしょう。
  2. 専門医の資格や経歴を確認する
    形成外科専門医や皮膚科専門医など、関連分野でのしっかりとしたバックグラウンドを持つ医師は、解剖学的な知識が豊富で、万が一のトラブル対応にも長けている傾向があります。美容外科医としての経験年数も一つの目安になります。
  3. カウンセリングを医師本人が丁寧に行う
    カウンセラーやスタッフによる説明だけで、医師との対話が流れ作業のように数分で終わってしまうようなクリニックは危険信号です。あなたの顔を診断し、施術を行うのは医師本人です。その医師が、あなたの悩みや疑問に時間をかけて向き合ってくれるか、その姿勢を見極めてください。
  4. メリットだけでなく、デメリットやリスクを詳しく説明する
    「簡単ですよ」「絶対に綺麗になりますよ」といった、良いことしか言わない医師は信用できません。むしろ、「あなたの場合はこういうリスクが考えられます」「ダウンタイムはこれくらい見てください」と、起こりうるネガティブな側面まで包み隠さず説明してくれる医師こそ、誠実である証拠です。
  5. 複数の選択肢を提示してくれる
    優れた医師は、糸リフトありきで話を進めません。あなたの悩みを解決するために、糸リフトが本当に最善なのかを考え、場合によっては「あなたには糸リフトより、ハイフ(HIFU)の方が合っているかもしれません」「まずはヒアルロン酸でこの部分を補う方法もあります」といったように、他の施術も含めた複数の選択肢を提示してくれます。そのクリニックの利益だけでなく、患者にとっての最善を考えてくれる姿勢の表れです。

これらのポイントは、いわば「良いレストラン」を見つける方法に似ています。ただ料理が美味しいだけでなく、シェフのこだわりが感じられ、サービスが行き届き、食材のリスク管理まで説明してくれる。そんな店なら、安心して食事を楽しめますよね。クリニック選びも、それと全く同じなのです。

※関連記事:失敗しないためのクリニック選び5つのポイント

7. カウンセリングで失敗を回避する質問術

クリニック選びの次の関門は、カウンセリングです。この場で、いかに的確な質問ができるかが、失敗を回避し、理想の結果を得るための鍵を握ります。緊張してしまって、聞きたかったことを忘れてしまった…なんてことにならないよう、事前に質問リストを準備していくことを強くお勧めします。

私がもし糸リフトのカウンセリングを受けるなら、最低でも以下の質問は必ずします。

  • デザインに関する質問
    • 「私の顔の骨格や脂肪のつき方を見て、どのようなデザインが最適だとお考えですか? その理由も教えてください」
    • 「具体的に、どの位置からどの方向に、何本の糸を入れる計画ですか?」
    • 「真顔の時だけでなく、笑ったり話したりした時の自然さも考慮していただけますか?」
  • 効果と持続性に関する質問
    • 「この施術で、私の悩み(ほうれい線、マリオネットラインなど)は、具体的にどの程度改善が見込めるでしょうか?」
    • 「効果の持続期間は、およそどれくらいと考えておけば良いですか?」
    • 「効果を長持ちさせるために、自分でできるケアや注意点はありますか?」
  • リスクとダウンタイムに関する質問
    • 「考えられるリスクや副作用の中で、最も起こる可能性が高いものは何ですか?」
    • 「腫れや痛み、内出血は、どのくらいの期間続きますか? 仕事はいつから復帰できますか?」
    • 「万が一、ひきつれや凸凹が治らなかった場合、どのような修正対応をしてもらえますか? その際の費用はかかりますか?」
  • 費用に関する質問
    • 「提示された見積もりには、施術代の他に、麻酔代、薬代、術後の診察代など、すべて含まれていますか?」
    • 「見積もり以上の追加費用が発生する可能性はありますか?」

これらの質問をすることで、医師の知識レベルや誠実さ、クリニックのサポート体制が見えてきます。そして、何より重要なのは、これらの質問に対する医師の「反応」です。面倒くさそうな顔をしたり、質問をはぐらかしたりするようなら、そのクリニックはあなたの大切な顔を任せるに値しません。あなたの不安な気持ちに寄り添い、一つひとつの質問に真摯に答えてくれる。そんな医師との出会いが、後悔しない糸リフトへの最も確実な道筋となるのです。

※関連記事:カウンセリングで必ず確認すべき質問リスト

8. 万が一、糸リフトで失敗した際の修正方法

どれだけ慎重にクリニックを選んでも、人間が行う施術である以上、結果が100%保証されるわけではありません。万が一、「失敗した」と感じる結果になってしまった場合、どうすれば良いのでしょうか。パニックにならず、冷静に対処することが重要です。

まず、最初にすべきことは、施術を受けたクリニックに連絡し、現状を相談することです。多くのクリニックでは、術後の経過観察のための診察が設けられています。自己判断で「失敗だ」と決めつけず、まずは医師の診察を受け、客観的な評価を聞きましょう。施術直後の腫れやむくみが原因で一時的に不自然に見えているだけの可能性もあります。

医師の診察を受けても、なお結果に納得がいかない場合や、クリニックの対応に不信感を抱いた場合は、セカンドオピニオンを求めることを検討しましょう。他のクリニックの医師に診てもらうことで、現在の状態が医学的に見てどうなのか、修正は可能なのか、といった客観的なアドバイスを得ることができます。

具体的な修正方法としては、以下のような選択肢が考えられます。

  • 糸の抜去: ひきつれが強い場合や、感染を起こしてしまった場合、挿入した糸を取り除く手術が必要になることがあります。ただし、時間が経過して組織と癒着してしまった糸を完全に取り除くのは、非常に困難な場合もあります。
  • マッサージや高周波(RF)治療: 軽度のひきつれや凸凹の場合、マッサージで組織をなじませたり、高周波を照射して糸の周辺組織を緩めたりすることで、症状が改善することがあります。
  • ヒアルロン酸や脂肪注入: 頬がこけてしまった部分や、凹みができてしまった部分に、ヒアルロン酸や自身の脂肪を注入して、ボリュームを補い、滑らかに整える方法です。
  • 別の糸を追加してバランスを調整する: 左右差が出てしまった場合や、引き上げが不十分な部分に、新たに糸を追加挿入して全体のバランスを整えることもあります。

重要なのは、修正治療は最初の施術よりも格段に難易度が上がるということです。そのため、修正を依頼するクリニックは、最初のクリニック選び以上に慎重に行う必要があります。糸リフトの修正経験が豊富な、信頼できる医師を探すことが何よりも大切です。焦らず、複数のクリニックでカウンセリングを受け、最も納得のいく方法を提案してくれた医師に任せるようにしましょう。

9. 安全に施術を受けるための最終確認事項

クリニックと医師を決め、カウンセリングにも納得し、いよいよ施術日を迎える。その最後の段階で、安全のために確認しておきたい最終チェックリストです。万全の状態で施術に臨むために、ぜひ参考にしてください。

  1. 体調は万全か?
    施術当日に風邪をひいていたり、寝不足だったりすると、体の抵抗力が落ち、術後の回復が遅れたり、感染症のリスクが高まったりする可能性があります。また、服用中の薬やサプリメントがある場合は、必ず事前に医師に伝えておきましょう。血液をサラサラにする効果のある薬などは、内出血のリスクを高めるため、一定期間休薬が必要な場合があります。
  2. 術後のスケジュールは確保できているか?
    「ダウンタイムはほとんどない」と聞いていても、個人差は必ずあります。腫れや内出血が予想以上に長引く可能性も考慮し、施術後の数日間は、大切な予定を入れず、ゆっくりと過ごせるスケジュールを組んでおくことをお勧めします。特に、人前に出る仕事をしている方は、余裕を持った休暇の確保が精神的な安心に繋がります。
  3. 同意書の内容を十分に理解したか?
    施術前には、必ず同意書への署名を求められます。これは、施術内容、期待できる効果、起こりうるリスクや副作用、費用などについて、すべて説明を受け、納得した上で施術に臨むという、非常に重要な書類です。専門用語が多くて難しいかもしれませんが、分からない部分は決して曖昧なままにせず、医師やスタッフに質問し、全ての項目を理解・納得した上でサインするようにしてください。
  4. 最終的なデザインの確認をしたか?
    施術直前、医師があなたの顔にマーキング(デザインの印付け)をします。この時が、最終的な仕上がりのイメージを共有する最後のチャンスです。「ここのたるみを、この方向にもう少し引き上げてほしい」といった希望があれば、遠慮せずに伝えましょう。この最後のコミュニケーションが、満足度を左右することもあります。
  5. 帰宅手段や術後のケア用品は準備できているか?
    施術後は、麻酔の影響などで、自分で車を運転して帰るのは危険です。公共交通機関やタクシー、家族の送迎など、安全な帰宅手段を確保しておきましょう。また、腫れを抑えるための冷却パックや、顔を隠すためのマスク、帽子、サングラスなどがあると便利です。

これらの最終確認は、いわば登山の前に行う装備の最終チェックのようなもの。準備を万全に整えることで、安心して施術という「山」に挑むことができ、結果として安全で満足のいく「登頂」に繋がるのです。

10. 糸の種類や本数で失敗リスクは変わるのか

カウンセリングを受けていると、「あなたの場合は、この最新の〇〇という糸を、10本入れるのがおすすめです」といった提案を受けることがあります。この「糸の種類」や「本数」は、失敗のリスクとどのように関係しているのでしょうか。これは非常に重要なポイントです。

まず、糸の種類について。現在、糸リフトで使われる糸には、体内で溶けて吸収される「溶ける糸」と、溶けずに残り続ける「溶けない糸」があります。また、糸についている「コグ」と呼ばれるトゲのような引っ掛かりの形状も様々です。

結論から言うと、特定の糸が絶対的に優れている、あるいは危険だということはありません。大切なのは、その人の皮膚の厚さ、たるみの強さ、脂肪の量、そして理想とする仕上がりに、その糸の特性が合っているかということです。

  • 皮膚が薄い人に、太くて硬いコグの糸を使えば、糸が透けたり、ひきつれが出たりするリスクは高まります。
  • 逆に、たるみが強い人に、引き上げる力の弱い繊細な糸を少数だけ使っても、十分な効果は得られないでしょう。

つまり、リスクを左右するのは糸そのものではなく、その糸の特性を熟知し、適材適所で使い分けることができる医師の診断力と技術力なのです。

次に、本数について。よく「本数が多ければ多いほど、効果が高くて長持ちする」と考えがちですが、これは必ずしも正しくありません。もちろん、ある程度の本数がなければ十分なリフトアップは望めませんが、やみくもに本数を増やせば、それだけ組織を傷つけることになり、腫れや内出血、ひきつれのリスクはむしろ高まります

私が取材した名医たちは、口を揃えてこう言います。「最小限の本数で、最大限の効果を出すのがプロの仕事だ」と。彼らは、たるみの原因となっているポイントを正確に見極め、そこに効果的な種類の糸を、最適な角度で、数本だけ挿入することで、驚くほど自然で美しいリフトアップを実現します。まるで、熟練の建築家が、建物の最も重要な構造部分だけを的確に補強するかのようです。

したがって、カウンセリングで注目すべきは、ただ本数の多さをアピールするクリニックではなく、「なぜ、あなたの場合はこの種類の糸が何本必要なのか」という理由を、解剖学的な見地から論理的に説明してくれるクリニックです。その説明に納得できて初めて、安心して施術を任せることができるでしょう。

※関連記事:効果を長持ちさせるアフターケアの秘訣

後悔しない選択のために、最後に伝えたいこと

ここまで、糸リフトの様々な失敗例と、それを回避するための具体的な方法について詳しく解説してきました。数々のリスクを知り、少し怖くなってしまったかもしれません。しかし、繰り返しになりますが、これらの知識はあなたを脅かすためのものではありません。

糸リフトは、正しく行われれば、あなたの魅力を引き出し、自信を与えてくれる素晴らしい施術です。その成功の鍵は、最新の機械や高価な糸にあるのではなく、どこまでいっても、あなたの顔と真摯に向き合ってくれる「医師」という一人の人間の腕と感性にかかっています。

失敗例を知ることは、良い医師とそうでない医師を見分ける「目」を養うための、最高のトレーニングです。カウンセリングという対話の場で、この記事で得た知識を武器に、医師の言葉の裏側にある技術力や誠実さを見抜いてください。

そして、最終的に大切なのは、あなた自身が心の底から納得し、信頼できると思える医師に巡り会うことです。焦る必要はありません。あなたの顔は、世界にたった一つしかない、かけがえのないものです。その大切な顔を任せるに足るパートナーを、じっくりと時間をかけて見つけ出すこと。それこそが、後悔しない、最高の糸リフトに繋がる唯一の道なのです。

 

美容医療は 「自己肯定感を高めるための選択肢のひとつ」 という信念の もと、一人ひとりの美しさと真摯に向き合う診療スタイルを貫いています。現在は、アジアの美容外科医との技術交流や教育にも力を入れ、国際的なネットワークづくりにも取り組んでいます。

  • <所属学会>

  • 日本美容外科学会JSAS

  • 日本美容外科学会JSASPS

  • 日本形成外科学会

  • 乳房オンコプラスティック

  • <資格>

  • 日本外科学会専門医

  • コンデンスリッチファット療法認定医

  • Total Definer by Alfredo Hoyos 認定医

  • VASER Lipo 認定医

  • RIBXCAR 認定医

【監修医師】

Casa de GRACIA GINZA / GRACIA Clinic 理事長 美容外科医・医学博士 樋口 隆男 Takao Higuchi

18年間にわたり呼吸器外科医として臨床に携わり、 オーストラリアの肺移植チームでの勤務経験も持つ。外科医としての豊富な経験を土台に、10年前に美容外科へ転向。現在は東京・銀座と福岡に美容クリニックを展開し、これまでに10,000例以上の脂肪吸引、4,000例を超える豊胸手術を手がけている。特にベイザー脂肪吸引、ハイブリッド豊胸、脂肪注入豊尻、肋骨リモデリング(RIBXCAR)、タミータック、乳房吊り上げなどのボディデザインを得意とし、自然で美しいシルエットづくりに国内外から定評がある。