2026.08.08
- 脂肪吸引

美容外科医が本当に解説する顔の脂肪吸引完全ガイド:第3章 顔面解剖学から理解する顔の脂肪吸引
【連載目次】美容外科医が本当に解説する顔の脂肪吸引完全ガイド
第1章 顔の脂肪吸引とは何か
第2章 顔が大きく見える本当の原因
第3章 顔面解剖学から理解する顔の脂肪吸引
第4章 顔の老化と脂肪の役割
第5章 適応・適応外
第6章 術前診察で美容外科医が見ているポイント
第7章 デザイン理論
第8章 ベイザー脂肪吸引とは
第9章 実際の手術
第10章 ダウンタイム
第11章 合併症
第12章 他施術との違い
第13章 症例ごとの治療戦略
第14章 Casa de GRACIA GINZA が目指す輪郭形成
第15章 FAQ
安全で美しい輪郭形成を支える美容外科医の解剖学
この記事のポイント
・顔の脂肪吸引は「脂肪を取る技術」ではなく、「解剖学を理解して行う輪郭形成術」です。
・顔は皮膚・脂肪・SMAS・リガメント・神経・血管・筋肉・骨からなる多層構造です。
・自然な仕上がりと安全性は、適切な層を理解し、重要な解剖学的構造を温存することによって支えられます。
はじめに
美容外科の手術では、「どのような器械を使うか」よりも、「どの層を操作するか」が結果を左右します。
顔には、皮膚のすぐ下に脂肪があるだけではありません。
その深部には、SMAS(表在性筋膜)、リテイニングリガメント、顔面神経、顔面動静脈、耳下腺、表情筋など、多くの重要な組織が密接に存在しています。
そのため、顔の脂肪吸引は「脂肪を吸引する手術」ではなく、「解剖学に基づいて皮下脂肪層を正確にデザインする手術」と考えるべきです。
顔は多層構造でできている
顔を一枚の組織として捉えることはできません。
美容外科では、顔を次のような層構造として理解します。
1. 皮膚(Skin)
2. 皮下脂肪(Superficial Fat)
3. SMAS(Superficial Musculoaponeurotic System)
4. 深部脂肪(Deep Fat Compartments)
5. 表情筋・咀嚼筋
6. 骨膜(Periosteum)
7. 顔面骨
それぞれの層には異なる役割があり、手術では対象となる層を正確に見極めることが重要です。
一般的に顔の脂肪吸引では、主に皮下脂肪層を対象とします。
SMASより深い層には重要な神経や血管、耳下腺などが存在するため、術者には解剖学に基づいた慎重な操作が求められます。
SMASとは何か
SMAS(Superficial Musculoaponeurotic System)は、皮膚と表情筋をつなぐ線維性組織であり、顔全体の支持構造として重要な役割を担っています。
加齢に伴ってSMASが弛緩すると、頬の軟部組織が下方へ移動し、ジョール形成やフェイスラインの不明瞭化につながります。
脂肪吸引はSMASを引き上げる手術ではありません。
そのため、SMASの弛緩が主な原因である場合には、糸リフトやフェイスリフトなどを組み合わせた方が、より良い改善が期待できることがあります。
SMASを理解することは、「脂肪吸引で改善できること」と「改善しにくいこと」を見極めるうえでも重要です。
脂肪コンパートメントという考え方
近年の顔面解剖学では、顔の脂肪は一枚の層ではなく、複数の脂肪コンパートメント(Fat Compartments)に分かれて存在することが明らかになっています。
それぞれのコンパートメントは線維性隔壁によって区切られ、独立した構造と加齢変化を示します。
臨床で特に重要なのは、
・頬部脂肪コンパートメント
・ジョール脂肪コンパートメント
・顎下脂肪コンパートメント
です。
これらは部位によって厚みや線維性、皮膚との結合の強さが異なるため、吸引方法も一律ではありません。
「どこに脂肪があるか」だけでなく、「どのコンパートメントをどの程度調整するか」が、自然な輪郭形成につながります。
リテイニングリガメントの役割
リテイニングリガメントは、皮膚・SMAS・骨膜をつなぐ支持組織です。
代表的なものには、
・Zygomatic Ligament
・Masseteric Ligament
・Mandibular Ligament
などがあります。
これらは顔の組織を適切な位置に保持する役割を担っています。
加齢により周囲の脂肪や支持組織が変化すると、リガメントで固定された部分との差が目立ち、フェイスラインの段差やジョール形成の一因となります。
脂肪吸引では、この支持構造を必要以上に損傷しないよう配慮することが重要です。
顔面神経と安全性
顔面神経は、表情筋を支配する重要な神経です。
耳下腺内で枝分かれした後、
・側頭枝
・頬骨枝
・頬枝
・下顎縁枝
・頸枝
へと分岐します。
特にフェイスラインや顎下では、下顎縁枝の走行を意識した手術が求められます。
適切な層で操作を行うことで神経損傷のリスクは低減できますが、解剖学的理解を欠いた手術では合併症につながる可能性があります。
顔面動脈・静脈と止血
顔は血流が豊富な部位です。
代表的な血管には、
・顔面動脈
・顔面静脈
・オトガイ下動脈
などがあります。
術前にチュメセント液を適切に注入し、血管走行を考慮した操作を行うことで、出血や内出血を抑えることにつながります。
安全性を高めるためには、器械だけではなく、術者の解剖学的知識と丁寧な手技が重要です。
解剖学を理解することが、美しい輪郭につながる
顔の脂肪吸引は、脂肪を減らすことだけが目的ではありません。
重要なのは、
・どの脂肪を残すか
・どの支持組織を温存するか
・どの層を安全に操作するか
を正確に判断することです。
過剰な吸引は、頬のこけや凹凸、不自然な輪郭につながる可能性があります。
一方で、解剖学に基づいた適切なデザインと吸引を行うことで、自然な陰影と滑らかなフェイスラインを目指すことができます。
Casa de GRACIA GINZA の考え方
Casa de GRACIA GINZAでは、顔の脂肪吸引を「脂肪を取る手術」とは考えていません。
一人ひとり異なる骨格、脂肪の分布、皮膚の厚み、支持組織の状態を評価し、解剖学に基づいたオーダーメイドの輪郭形成を目指しています。
安全性と美しさは対立するものではありません。
解剖学への深い理解があるからこそ、長期的にも自然で調和の取れたフェイスラインを追求できると考えています。
次章予告
次章では、「顔の老化と脂肪の役割」をテーマに、骨格の変化、脂肪コンパートメントの萎縮や下垂、SMASやリテイニングリガメントの経年変化を踏まえ、なぜ加齢とともにフェイスラインが変化するのかを詳しく解説します。