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2026.09.04

  • 脂肪吸引
  • ボディコントアリング
谷口 正和

Body Contouring Science :第3回 脂肪は、なぜその場所につくのか?

第3回 脂肪は、なぜその場所につくのか?

― 太る場所は、あなたの意思だけでは決まらない。 ―
“Fat distribution is not random.”

「体重はそれほど増えていないのに、お腹だけが気になる」「痩せても太ももだけ細くならない」「昔から二の腕だけは落ちにくい」。こうした悩みを持つ方は少なくありません。

同じように食事をして、同じように体重が増えたとしても、脂肪のつき方は人によって驚くほど違います。お腹につきやすい人もいれば、腰まわりや太ももにつきやすい人もいます。男性では腹部が目立ちやすく、女性では臀部や大腿に脂肪が蓄積しやすい傾向があることも、古くから知られています。

では、この違いはどこから生まれるのでしょうか。「運動不足だから」「食べすぎだから」という説明だけでは十分ではありません。摂取するエネルギー量は脂肪がどれだけ増えるかには大きく関係しますが、その脂肪が身体のどこに蓄積しやすいかには、また別の生物学があります。

脂肪は、身体の空いた場所へ無作為に蓄積されているわけではないのです。

今回のポイント
・脂肪組織は全身で均一ではなく、部位ごとに性質の異なる「脂肪デポ」です。
・どこに脂肪がつきやすいかには、遺伝・性別・年齢・ホルモンなど複数の要因が関係しています。
・ダイエットで変化するのは主に脂肪細胞の「大きさ」で、部位を選んで減らすことはできません。

脂肪は、全身で同じ組織ではない

私たちは普段、「体脂肪」を一つのものとして考えがちです。しかし生物学的に見ると、腹部の脂肪と太ももの脂肪は、単に存在する場所が違うだけではありません。異なる部位の脂肪組織には、脂肪を蓄える能力や脂肪細胞の増え方、代謝特性などに違いがあります。現在では、脂肪組織は部位ごとに異なる性質を持つ「脂肪デポ(adipose depot)」として考えられています。

例えば、腹部に存在する脂肪と臀部・大腿部に存在する脂肪では、脂肪細胞の発生や増殖、脂質の貯蔵・放出に関わる性質が異なることが示されています。さらに、皮下脂肪と内臓脂肪では代謝的な性質も異なり、同じ「脂肪」であっても身体への影響まで同じではありません。

つまり、「脂肪が多いか少ないか」だけを見ていては、その人の身体を十分に理解することはできません。大切なのは、脂肪の量と同時に、その分布を見ることです。

脂肪の分布が、体型を決める

なぜ、人によって脂肪のつく場所が違うのか

その理由の一つが遺伝です。双生児研究や家族研究、さらに近年のゲノムワイド関連解析(GWAS)によって、体脂肪量だけでなく、ウエスト周囲径やWaist-Hip Ratio(WHR)、内臓脂肪量など、脂肪の分布そのものにも遺伝的要因が関係していることが分かってきました。体型が親子で似るのは、生活習慣を共有しているからだけではないのです。

ただし、「この遺伝子を持っているから太ももに脂肪がつく」というほど単純な話ではありません。一般的な体脂肪分布には多数の遺伝的変異が少しずつ関与し、それに性別、年齢、ホルモン、食生活や活動量などが重なって、一人ひとりの体型が形成されていると考えられています。

だから、同じダイエットをしても全員が同じ体型になるわけではありません。体重は変えられても、脂肪がつきやすい場所という「個人差」まで完全に同じにすることはできないからです。

女性は太もも、男性はお腹――その違いはどこから来るのか

脂肪分布を考えるうえで、もう一つ無視できないのがホルモンです。一般に、女性は臀部から大腿にかけて皮下脂肪を蓄積しやすい「gynoid(下半身型)」の分布を示しやすく、男性では腹部、とくに内臓脂肪を含む上半身へ脂肪が集まりやすい「android(上半身型)」の傾向があります。もちろん個人差はありますが、この男女差にはエストロゲンやアンドロゲンなどの性ホルモンが関係しています。

このことを分かりやすく示すのが、女性の閉経前後の変化です。閉経に伴って卵巣由来ホルモンの環境が変化すると、脂肪分布も変化し、腹部へ脂肪が蓄積しやすくなることが知られています。つまり、同じ人であっても、生涯を通じて脂肪のつき方が一定とは限らないのです。

遺伝、性別、年齢、ホルモン。そして、それぞれの部位に存在する脂肪組織そのものの性質。私たちの体型は、こうした複数の要素が重なった結果として作られています。だからこそ、「ここだけ痩せない」のは、単純に努力が足りないからとは限りません。

ダイエットで脂肪細胞はどうなるのか

ここで、もう一つ重要なことがあります。私たちがダイエットで痩せるとき、脂肪組織では何が起きているのでしょうか。

成人の脂肪組織では、体重の増減に伴う変化の多くは、脂肪細胞そのものが消えたり新しく生まれたりすることではなく、一つひとつの脂肪細胞に蓄えられている脂質の量が変化することによって起こります。体重が増えれば脂肪細胞は大きくなり、減量すれば小さくなる。もちろん脂肪細胞の新生や入れ替わりも起こりますが、一般的なダイエットによる体型変化を理解するうえでは、まずこの「脂肪細胞のサイズが変わる」という考え方が重要です。

つまり、ダイエットによって脂肪細胞は小さくなっても、特定の部位の脂肪細胞だけを選択的になくしているわけではありません。身体は必要なエネルギーを全身の脂肪組織から動員しますが、その反応の程度は部位によって同じではありません。ここに、「体重は減ったのに、気になる場所だけ残る」という現象を理解するヒントがあります。

体重の増減に伴う脂肪細胞の変化

なぜ「ここだけ痩せない」が起こるのか

「5kg痩せたのに、太ももの外側だけは変わらない」「顔は痩せたのに、お腹はまだ気になる」。こうした経験には個人差がありますが、決して不思議なことではありません。

前半で触れたように、脂肪組織は全身で均一ではありません。腹部、臀部、大腿など、それぞれの脂肪組織には代謝的な性質の違いがあります。脂肪の蓄積や分解に関わる酵素活性、血流、ホルモンや交感神経への反応などにも部位差があり、減量したときにすべての場所が同じ割合で細くなるわけではありません。

さらに、その人がもともとどこに脂肪を蓄積しやすいかという「分布のパターン」も影響します。体重が増えたときに下半身へ脂肪がつきやすい人は、減量後も相対的に下半身のボリュームが目立つことがあります。逆に腹部へ脂肪が集まりやすい人では、全身が細くなっても腹部の輪郭が最後まで気になることがあります。

そのため、ダイエットによって体重という数字は大きく変化しても、本人が最も気にしていたシルエットが思ったほど変わらないことがあります。「体重を減らすこと」と「理想の体型になること」は、同じではないのです。

「部分痩せ」はできるのか

ここでよく出てくるのが、「部分痩せ」という言葉です。例えば腹筋運動をすればお腹の脂肪だけが落ちる、脚の運動をすれば太ももの脂肪だけが減る、と考える人は少なくありません。しかし、運動した筋肉の近くにある皮下脂肪だけを狙って大きく減らせるという意味での「部分痩せ」は、一般的なダイエットの仕組みとは異なります。

運動によって消費エネルギーが増え、結果として全身の脂肪量が減少することはもちろんあります。また、筋肉が発達すれば身体の輪郭そのものが変わるため、「その部位が引き締まって見える」こともあります。しかし、それは必ずしも、その場所の脂肪だけが選択的に減ったことを意味しません。

ダイエットや運動は、健康的な体重や体脂肪率を目指すための基本です。一方で、「体重は十分落ちた。それでもこの部分のボリュームだけが気になる」という問題は、体重管理とは別の視点から考える必要があります。

「何kg減らすか」から「どこを変えるか」へ

ここまでの話を整理すると、身体の形を決めているのは単純な体脂肪量だけではないことが分かります。遺伝やホルモンによって脂肪のつきやすい場所には個人差があり、さらに脂肪組織そのものにも部位による性質の違いがあります。だから、同じ5kgを減量しても、全員が同じようなシルエットになるわけではありません。

この事実は、第2回でお話しした「人は数字ではなく、シルエットを見ている」という話につながります。体重計が評価するのは、身体全体の重さです。しかし鏡に映るのは、脂肪がどこに存在し、どのような輪郭を作っているかという分布の結果です。

もし目的が健康のための減量であれば、「何kg減らすか」は重要な目標になります。しかし目的が「身体のラインを美しくしたい」であるなら、問いそのものが変わります。「何kg減らすか」ではなく、「どこを、どう変えるか」。ここから先が、美容外科の領域です。

ダイエットと、シェイプデザインの違い

脂肪吸引は、なぜ「部分的に」形を変えられるのか

ダイエットでは、身体がどの部位の脂肪を優先して減らすかを自由に指定することはできません。一方、脂肪吸引では、皮下脂肪に対して直接アプローチするため、「どの部位のボリュームを減らすか」を選択できます。ここに、ダイエットと脂肪吸引の大きな違いがあります。

例えば、体重としては十分に痩せていても、顎下に脂肪が残ればフェイスラインが曖昧に見えることがあります。二の腕の後面にボリュームがあれば、上半身全体が大きく見えることもあります。腹部や腰まわりでも、局所的な脂肪の分布によってウエストのラインは変化します。脂肪吸引では、こうした「全身の体重では説明できない局所的なボリューム」に対してアプローチすることができます。

ただし、ここで大切なのは、脂肪吸引を単純な「部分痩せ」として考えないことです。目的は、気になる場所の脂肪をただ減らすことではありません。その部位が身体全体の中でどのような役割を持ち、ボリュームを変えることでシルエットがどう変化するのかまで考える必要があります。

取れば取るほど、美しくなるわけではない

「脂肪吸引なら、できるだけたくさん取ったほうが細くなるのではないか。」そう考えるのは自然なことかもしれません。しかし、Body Contouringという視点では、脂肪は単なる「不要なもの」ではありません。

脂肪には身体の丸みや曲線を作る役割があります。例えば女性らしい臀部の丸みや、ウエストからヒップへ続くカーブは、骨格だけで作られているわけではありません。適切な位置に存在する皮下脂肪も、そのシルエットを構成する重要な要素です。

そのため、脂肪を均一に減らしてしまえば、必ず美しい身体になるとは限りません。必要なボリュームまで失えば、平坦に見えたり、骨格が強調されたり、身体全体のバランスが崩れたりする可能性があります。大切なのは、脂肪を「取る」ことではなく、「選ぶ」ことです。

脂肪は、単なる「余分なもの」ではない

脂肪を「残す」というデザイン

脂肪吸引のデザインを考えるとき、私は「どこから取るか」と同じくらい、「どこを残すか」が重要だと考えています。

例えばウエストを細く見せたい場合、ウエストだけを単独で見るのではなく、その上下にある胸郭や骨盤、ヒップとの関係を見る必要があります。二の腕であれば、腕の周径だけではなく、肩から肘へ続くラインや上半身全体とのバランスを考えます。顔であれば、頬や顎下の脂肪量だけではなく、頬骨、下顎、首との連続性まで含めて考えます。

つまり、身体を一つひとつの部位に分解して考えるだけでは十分ではありません。ある場所のボリュームを減らすことで、その隣の部位が相対的に強調されることもあります。逆に、あえて脂肪を残すことで、周囲とのコントラストが生まれ、結果として目的の部位がより細く見えることもあります。これは第2回で紹介した「人は絶対的な大きさではなく、周囲との関係から形を認識する」という話ともつながっています。

脂肪吸引で扱っているのは脂肪ですが、設計しているのは脂肪ではありません。シルエットなのです。

Science Behind the Beauty

脂肪組織は、全身に均一に存在する単なるエネルギー貯蔵庫ではありません。皮下脂肪と内臓脂肪には代謝的な違いがあり、さらに皮下脂肪の中でも腹部、臀部、大腿など、部位によって脂肪細胞の性質や脂質代謝には違いがあります。脂肪分布には遺伝的背景があり、性ホルモンや年齢なども関与するため、「どこに脂肪がつきやすいか」には大きな個人差が生まれます。

一方、一般的な減量ではエネルギー収支を通じて全身の脂肪量を減らしていくため、本人が「ここを細くしたい」と考えた部位だけを自由に選択して脂肪を減らすことはできません。脂肪吸引がダイエットと根本的に異なるのは、皮下脂肪の分布そのものへ局所的に介入できる点にあります。

ただし、美容外科的に重要なのは「脂肪が減った」という事実だけではありません。脂肪を減らす場所と残す場所の組み合わせによって、身体の輪郭や各部位の比率が変化します。ここに、Body Contouringという考え方があります。

Body Contouringとは、脂肪の量を減らす医学ではなく、脂肪の分布を利用して身体の形を設計する美容医学なのです。

Summary

私たちの身体に脂肪がつく場所は、偶然だけで決まっているわけではありません。遺伝、性別、ホルモン、年齢、そして部位ごとの脂肪組織の性質など、複数の生物学的要因が重なり合って、一人ひとり異なる脂肪分布を作っています。

だから、同じ体重でも体型は違います。そして同じようにダイエットをしても、全員が同じ場所から同じように痩せるわけではありません。「ここだけが残る」という悩みには、単純な努力の量だけでは説明できない身体の仕組みがあります。

ダイエットが全身の脂肪量を変える方法だとすれば、脂肪吸引は皮下脂肪の分布へ直接介入する方法です。しかし、そこで目指すべきものは「できるだけ多く取ること」ではありません。どこを減らし、どこを残すのか。その選択によって身体のラインを整えていく。それが、Body Contouringです。

Reader’s Reflection

もし体重計に乗らず、自分の身体を鏡だけで見たとしたら、気になるのは「何kgあるか」でしょうか。それとも、顎下、二の腕、ウエスト、腰、太ももといった特定の場所でしょうか。

私たちは「痩せたい」と言いながら、実際には体重そのものではなく、「この部分をもう少しこうしたい」と考えていることがあります。その違いに気づくと、ダイエットとBody Contouringの役割も見えてきます。健康のために体重や体脂肪を管理することと、身体のシルエットを整えることは、似ているようで目的が異なります。

体重は、身体の量を表す数字です。体型は、脂肪がどこにあるかによって生まれる形です。

Looking Ahead

ここまで第2回では「人は数字ではなくシルエットを見ている」、第3回では「そのシルエットを作る脂肪は、全身に均一についているわけではない」という話をしてきました。

では、美しいシルエットを考えるとき、私たちは何を基準に「バランスが良い」と感じているのでしょうか。細ければ細いほど美しいのでしょうか。それとも、人が美しいと感じる身体には、何らかの比率(Proportion)が存在するのでしょうか。

次回は、ウエスト、ヒップ、肩幅など身体各部の関係から、Body Contouringにおける「比率」の意味を考えていきます。

第4回 美しい身体は、「細さ」ではなく「比率」で決まる。― Proportionがつくる、シルエットの科学。 ―

written by

福岡院 院長

谷口 正和

MASAKAZU TANIGUCHI

人には言いづらいお悩みに寄り添い、皮膚科医としての経験を活かして最適な治療をご提案します。日常が少し前向きになるような変化を大切にし、一人ひとりに合ったケアでサポートいたします。

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