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2026.10.21

  • 脂肪吸引
樋口 隆男

1万例以上の脂肪吸引経験から考える、「取りすぎない脂肪吸引」

GRACIAの医学知識データベース|脂肪吸引・適応とデザイン

――脂肪を取る判断と残す判断。その境界をどう見極めるか。

「できるだけ脂肪を取って、細くしたい」

脂肪吸引を検討される方にとって、自然な希望だと思います。手術を受けるからには、十分な変化を得たい。その気持ちに応えるためには、脂肪を減らした後に身体がどう見えるかまで考える必要があります。

私が診察で重視しているのは、脂肪の量に加えて、皮膚の状態、たるみの程度、筋肉量、ピンチテスト、皮膚の張力、そして実年齢です。これらを組み合わせ、その方の身体にとって適切な吸引範囲と、残すべき厚みを考えます。

この記事でお伝えしたいのは、脂肪吸引の仕上がりには「取る技術」とともに「残す判断」が必要だということです。

文・監修:樋口 隆男(GRACIA AESTHETICS 理事長)

脂肪を減らした後の皮膚まで考える

脂肪吸引では、皮膚の下にある脂肪(皮下脂肪)を減らします。その後、皮膚が新しい輪郭に沿って収縮し、再配置されることで、身体のラインが整っていきます。

ただし、皮膚がどの程度収縮するかには個人差があります。弾性のある皮膚と、薄く伸びて戻りにくくなった皮膚とでは、同量の脂肪を減らしても結果は異なります。皮膚の弾性が乏しい場合には、脂肪を減らした後に余った皮膚が目立つことがあります[1]。

そのため、「脂肪が厚いから、多く取れる」とだけ考えることはできません。脂肪の厚みと、その上にある皮膚の状態を一緒に評価する必要があります。

また、凹凸や引きつれは、過剰な吸引だけで起こるものではありません。吸引の深さや偏り、術後の瘢痕・癒着、皮膚の余りなど、複数の要因が関係します。「少なく取れば問題が起きない」という単純な話でもないのです[2]。

脂肪吸引の適応を判断する6つの診察項目

① 皮膚の状態――厚みと質を確認する

まず確認するのは、脂肪を覆っている皮膚そのものです。

皮膚に厚みがあるか、薄くなっているか。細かいしわや妊娠線(肉割れ)があるか。過去の手術による傷や、硬く動きにくい部分がないか。見た目と触診の両方から情報を集めます。

妊娠線があるという理由だけで、脂肪吸引ができないと判断するわけではありません。ただし、皮膚がどのように伸びてきたかを知る手がかりになります。

脂肪を減らした後の輪郭を考えるうえでは、現在の脂肪量だけでなく、その身体が妊娠や体重変動などを通してどう変化してきたかという経過も、手がかりになります。

② たるみの程度――脂肪の厚みと皮膚の余りを分ける

患者様が「脂肪」と感じているふくらみには、皮膚のたるみが重なっていることがあります。

たとえば、下腹部のつまめる部分が厚く見えても、皮下脂肪が多いのか、皮膚が余って折り重なっているのかで、治療方針は変わります。なお、お腹の張り出しには内臓脂肪が関与していることもあり、内臓脂肪は脂肪吸引の対象にはなりません。

ここで大切なのは、脂肪を減らすことで改善する部分と、皮膚そのものへの対応が必要な部分を分けて考えることです。

皮膚の余りが大きい場合、脂肪吸引だけでは希望する形に近づけない可能性があります。状態によっては、余剰皮膚を切除する手術も選択肢になります[3]。

③ 筋肉量――脂肪の下にある形を読む

身体の太さや輪郭には、筋肉も関係しています。

二の腕や太ももでは、脂肪だけでなく筋肉の発達によってボリュームが出ていることがあります。筋肉の張り出しが大きい部位で、細さだけを求めて脂肪を減らしても、希望する輪郭になるとは限りません。

反対に、筋肉の輪郭をどの程度見せるかによっても、必要な脂肪の残し方は変わります。やわらかい曲線を目指すのか、筋肉の形を感じる輪郭を目指すのか。患者様の希望と、もともとの身体の構造を合わせて考えます。

脂肪吸引で変えられるのは脂肪の量と分布であり、筋肉や骨格の形そのものは変わりません。脂肪の下にどのような形があるかを理解しておくことが、仕上がりの予測につながります。

④ ピンチテスト――つまめる厚みをどう解釈するか

ピンチテスト(pinch test)は、皮膚と皮下組織を指でつまみ、その厚みや部位ごとの差を確認する診察方法です。脂肪吸引では、この触診による評価が手術前だけでなく、手術中に吸引量の適切さを判断する際にも用いられます[4]。

ただし、つまんでいるのは脂肪だけではありません。皮膚を含む組織が折り重なった厚みです。そのため、「これだけつまめるから、この厚みをすべて取れる」という意味にはなりません。

私が重視するのは、つまめる厚みそのものだけでなく、周囲との違いや、皮膚の状態との組み合わせです。同じような厚みでも、皮膚の余りが多い場合と、張りが保たれている場合では判断が異なります。ピンチテストは、ほかの診察所見と合わせて解釈するものです。

⑤ 皮膚の張力――張って見える理由まで考える

皮膚が張って見えることと、脂肪を減らした後によく戻ることは、必ずしも同じではありません。

ここでいう張力は、診察で皮膚を動かしたときの張りや抵抗のことです。一方、弾性は、変形した皮膚が元に戻ろうとする性質を指します。

脂肪によって内側から押されているために張って見える皮膚もあります。その張りを、そのまま術後の収縮力と考えることはできません。脂肪吸引は組織を「薄くする」手術であり、皮膚を「引き締める」手術ではありません。皮膚の収縮に過度に依存した計画は、望んだ結果につながらないことが指摘されています[4]。

皮膚がどの程度動くか、引いたときにどう変化するか、戻り方はどうか。こうした所見を、たるみの程度や皮膚の質と合わせて確認します。術後の収縮を完全に予測することはできませんが、脂肪を減らす範囲を考えるための重要な情報になります。

⑥ 実年齢――見た目の若さだけで決めない

私は、皮膚の見た目や、いわゆる「肌年齢」だけでなく、実年齢も確認します。

肌年齢という言葉で表される状態が、そのまま手術後の皮膚のなじみ方や回復力を示すわけではありません。実年齢を踏まえながら、皮膚の状態、既往歴、服薬、喫煙歴、体重変動などを総合して考える必要があります。

ただし、年齢だけで吸引量や適応を決めることもありません。年齢を重ねていても皮膚の弾性が保たれている方はいますし、若い方でも大きな体重変動などで皮膚が伸びている場合があります。年齢と皮膚の状態には関連があっても、同一ではありません[3]。

実年齢を背景情報として捉え、目の前の組織を診察する。その両方が必要だと考えています。

脂肪を「残す」とは、どのような判断か

脂肪は、部位によって厚みや構造が異なります。皮膚のすぐ下にある浅い脂肪層と、より深い脂肪層では、手術での扱い方も変わります。

脂肪吸引の多くは中間から深い層で行われ、浅い脂肪層を温存することが、皮膚のディンプル(えくぼ状の陥凹)、波打ち、色素沈着、輪郭の不整を防ぐうえで決定的に重要であるとされています[5]。「残す」ことは、消極的な選択ではなく、仕上がりを守るための積極的な判断です。

また、身体には、皮下組織が筋膜に固く結合した領域(zones of adherence)があります。外側殿部の陥凹、殿溝、大腿後面の遠位、大腿内側の中央、腸脛靭帯の外下方などがこれにあたり、これらは直接吸引すると変形を生じやすい領域として、避けるべき部位が明確に定義されています[5]。「取りすぎない」という判断は、感覚ではなく、こうした解剖学的な指標に支えられています。

私が考える「残す判断」は、次のような視点を含みます。

・皮膚表面のなめらかさを保つために必要な厚みを残す。
・筋肉や骨格の輪郭が、希望以上に目立たないように調整する。
・吸引する部位と、その周囲が自然につながるようにする。
・皮膚の余りが目立つ可能性を考え、減量の程度を判断する。

一部分だけを薄くしても、隣の部位との間に段差ができれば、身体全体のラインは整いません。残す厚みは、単独の部位だけでなく、周囲との連続性の中で考えます。

「何cc取るか」だけでは判断できない理由

同じ吸引量でも、広い範囲から分散して減らす場合と、狭い範囲から集中的に減らす場合では、組織への影響も輪郭の変化も異なります。

そのため、ほかの方の吸引量を、そのまま自分の目標にすることはできません。吸引量は治療を記録し管理するうえで重要ですが、それだけで仕上がりの良し悪しは判断できないのです。

これは、私個人の方針というより、脂肪吸引という手術が積み上げてきた原則でもあります。近代的な脂肪吸引を確立したIllouzは、1989年に「脂肪吸引の十戒」を示しました。その第4項は、次のようなものです。

重要なのは何を取り除いたかではなく、何を残したかである。

it is not so much what is removed that is important, but what is left behind [4]

私が目指すのは、必要な変化を得ながら、皮膚の状態と身体の構造に合った輪郭をつくることです。十分な減量が必要な部分には対応し、残す理由のある部分は残す。その判断を部位ごとに行います。

脂肪吸引だけで解決できない場合もある

診察の結果、主な問題が脂肪ではなく、余剰皮膚や腹壁のゆるみ(腹直筋離開)にあると考えられることもあります。

たとえば、皮膚の余りが大きい腹部では、脂肪吸引の量を増やすだけでは対応できません。状態によっては、余剰皮膚の切除や腹壁への処置を行う腹壁形成術(Tummy Tuck/abdominoplasty)を検討します。ただし、切開の傷や回復期間、合併症のリスクも含めて判断する必要があります[6]。

脂肪を残せば、すべてのたるみを防げるわけでもありません。必要なのは、その方の悩みの原因に合った方法を選ぶことです。

私が考える「取りすぎない脂肪吸引」

「取りすぎない脂肪吸引」とは、一律に吸引量を少なくすることではありません。

皮膚の状態、たるみの程度、筋肉量、ピンチテスト、皮膚の張力、実年齢を踏まえ、取ることで得られる変化と、残すことで保てる形を両方考えることです。

患者様にも、「どこを減らすのか」とともに、「どこを残すのか、その理由は何か」を理解していただきたいと思います。

目指しているのは、細さに加えて、なめらかな表面と自然につながる身体のラインです。そのために、脂肪を取る判断と同じだけ、残す判断を大切にしています。

リスク・副作用について

脂肪吸引には、腫れ・内出血・痛み・感覚の変化のほか、凹凸、左右差、たるみ、色素沈着、漿液腫、血腫、感染、創傷治癒不全、深部静脈血栓症や肺塞栓症などの血栓性合併症、麻酔に伴うリスク、修正手術が必要になる可能性などがあります[7]。

得られる変化や回復には個人差があります。診察では、適応と限界を含めてご説明します。

費用について(税込・自由診療)

・GRACIA clinic(福岡院):ベイザー脂肪吸引は部位ごとの料金です。主な部位は、二の腕 275,000円/下腹部 275,000円/腹部全体(上腹部・下腹部・側腹部)770,000円/太もも全周(内側・外側・前側)770,000円です(いずれも通常価格。モニター価格は220,000円/220,000円/616,000円/616,000円)。腹壁形成術は、タミータック(臍移動なし)1,320,000円/タミータック(臍移動あり)1,584,000円です(いずれも通常価格。モニター価格は1,100,000円/1,320,000円)。

・Casa de GRACIA GINZA(銀座院):ベイザー脂肪吸引は部位ごとの料金です。主な部位は、二の腕 275,000円/下腹部 275,000円/腹部全体(上腹部・下腹部・側腹部)770,000円/太もも全周(内側・外側・前側)770,000円です(いずれも通常価格。モニター価格は220,000円/220,000円/616,000円/616,000円)。腹壁形成術は、タミータック(臍移動なし)1,320,000円/タミータック(臍移動あり)1,584,000円です(いずれも通常価格。モニター価格は1,100,000円/1,320,000円)。

脂肪吸引の上記以外の部位の料金は、各院の料金表をご確認ください。別途、麻酔費用(全身麻酔165,000円、または静脈麻酔の基本セット66,000円〈麻酔代・内服薬・サポーター〉)がかかります。脂肪吸引では、BMI25〜30の方は55,000円、30以上の方は110,000円が加算されます。

※VASER(ベイザー)は国内未承認の医療機器です。詳しくは本記事末尾の「使用機器に関する注意事項」をご確認ください。

本記事で扱う脂肪吸引・腹壁形成術は自由診療であり、公的医療保険の適用外です。

使用機器に関する注意事項

■ VASER(ベイザー)
・未承認医療機器である旨……本記事の費用欄に記載しているベイザー脂肪吸引に用いる機器(VASERlipo System/米国Solta Medical社製)は、日本国内において医薬品医療機器等法(薬機法)上の承認を受けていない未承認医療機器です。
・入手経路……国内の輸入代行業者を通じた医師による輸入です。
・同一の性能を有する国内承認医療機器の有無……同一の性能を持つ国内承認医療機器はありません。
・諸外国における安全性等に係る情報……米国食品医薬品局(FDA)の公表情報によれば、VASERlipo Systemは、審美目的のボディコントアリングのための皮下脂肪組織の破砕を目的とする医療機器として、2019年に510(k)認可を受けています(K190551)。一方、国内では未承認のため、重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。

※未承認医療機器を用いる治療は自由診療となり、健康保険は適用されません。万一重篤な副作用が生じた場合、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となることがあります。

参考文献

1. American Society of Plastic Surgeons. Body Lift. https://www.plasticsurgery.org/cosmetic-procedures/body-lift
2. Dixit VV, Wagh MS. Unfavourable outcomes of liposuction and their management. Indian J Plast Surg. 2013;46(2):377-392. https://doi.org/10.4103/0970-0358.118617
3. Australian Society of Plastic Surgeons. Liposuction. https://plasticsurgery.org.au/procedures/surgical-procedures/liposuction/
4. Khanna A, Filobbos G. Avoiding unfavourable outcomes in liposuction. Indian J Plast Surg. 2013;46(2):393-400. https://doi.org/10.4103/0970-0358.118618
5. Tabbal GN, Ahmad J, Lista F, Rohrich RJ. Advances in liposuction: five key principles with emphasis on patient safety and outcomes. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2013;1(8):e75. https://doi.org/10.1097/GOX.0000000000000007
6. American Society of Plastic Surgeons. Tummy Tuck Safety. https://www.plasticsurgery.org/cosmetic-procedures/tummy-tuck/safety
7. American Society of Plastic Surgeons. Liposuction Safety. https://www.plasticsurgery.org/cosmetic-procedures/liposuction/safety

執筆医師

樋口 隆男(ひぐち たかお)
GRACIA AESTHETICS 理事長 / GRACIA 総院長

福岡大学医学部を卒業後、呼吸器外科医として肺移植を含む呼吸器外科手術に携わる。オーストラリア・アルフレッド病院へのクリニカル・リサーチフェローとしての留学を経て博士号を取得し、国立病院の呼吸器外科部長を務めた後、美容外科の道へ。2019年にGRACIA clinic(福岡院)、2022年にCasa de GRACIA GINZA(銀座院)を開院。脂肪吸引・豊胸・たるみ治療・肋骨リモデリングを中心に、長年の手術経験と全身管理の視点を活かした治療を行っている。

日本外科学会/日本形成外科学会/日本美容皮膚科学会/日本美容外科学会(JSAPS)/日本美容外科学会(JSAS)/日本抗加齢学会 会員|日本外科学会専門医|コンデンスリッチファット療法認定医|RIBXCAR認定医|VASER Lipo認定医|Total Definer by Alfredo Hoyos認定医|Aesthetic Xpert Asia 代表理事

※本コラムは一般向けに医学情報を整理したものです。効果・経過には個人差があり、適応・手術方法・回復経過は診察により異なります。脂肪吸引・腹壁形成術は自由診療です。

written by

GRACIA理事長 / 総院長

樋口 隆男

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