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2025.9.20
ほうれい線のよくある質問10選|専門家があなたの疑問をすべて解決

鏡を見るたびに、くっきりと刻まれたほうれい線にため息をついていませんか。

ほうれい線は、年齢を感じさせるサインの代表格でありながら、その原因や対策については誤解も少なくありません。「遺伝だから仕方ない」「一度治療したらやめられないのでは?」といった疑問や不安から、一歩を踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、美容医療の専門家の視点から、ほうれい線に関する10の代表的な質問に、科学的根拠に基づき詳しくお答えします。遺伝との関係から、日常生活の疑問、最新の治療法まで、あなたが抱えるほうれい線への悩みを根本から解消することを目指します。

xの記事が、正しい知識を得て、あなたに合った最適なケアを見つけるための、信頼できるガイドとなることを願っています。

1. ほうれい線は遺伝しますか?

結論から言うと、「ほうれい線の現れやすさ」は遺伝的要因の影響を強く受けます。

ほうれい線そのものが遺伝子に組み込まれているわけではありません。しかし、その形成に深く関わる**「骨格構造」「皮膚の特性」「脂肪のつき方」**といった要素は、紛れもなく親から子へと受け継がれる遺伝的素因です。これらが複合的に絡み合うことで、ほうれい線の目立ちやすさに個人差が生まれるのです。

1-1. 骨格構造の影響

顔の土台となる骨格は、ほうれい線の深さを決定づける最も重要な先天性の要因です。

  • 頬骨(きょうこつ)の高さと突出度:
    頬骨が高く、前方にしっかりと突出している場合、その上にある頬の脂肪(メーラーファット)や皮膚をテントの支柱のように力強く支えることができます。このため、たるみが生じにくく、ほうれい線が目立ちにくい傾向にあります。逆に、頬骨が低い、あるいは平坦な骨格の場合、頬の組織を支える力が弱く、若いうちから重力の影響で垂れ下がりやすいため、ほうれい線の溝が深くなりやすいのです。
  • 上顎骨(じょうがくこつ)の形状と歯並び:
    鼻の横から口元にかけての土台となる上顎骨の形状も重要です。例えば、歯並びの関係で口元が前に出ている、いわゆる「口ゴボ」と呼ばれる状態や、逆に口元が後退している場合、ほうれい線の起点となる部分に構造的な段差が生まれやすく、影となって目立ちやすくなります。

1-2. 皮膚の生物学的特性

肌そのものの質も、遺伝によって大きく左右されます。

  • コラーゲンとエラスチンの質と量:
    肌のハリや弾力を司る真皮層のコラーゲンやエラスチンの量、そしてそれらの質(分解されにくさ、生成能力)は遺伝的にプログラムされています。生まれつき肌が柔らかく、弾力性が低い肌質の方は、加齢による弾力低下の影響をより受けやすく、皮膚が伸びてたるみやすいと言えます。
  • 皮膚の厚み:
    皮膚が薄い方は、内部の構造的な変化(骨の萎縮や脂肪の減少)が表面に現れやすく、また乾燥などの外部ダメージも受けやすいため、ほうれい線が刻まれやすい傾向があります。

1-3. 顔の脂肪の分布

顔のどの部分に皮下脂肪がつきやすいか、という脂肪の分布(ファットコンパートメント)も遺伝的要素が強いです。頬の中央部分に脂肪が多い方は、その重みでたるみが生じやすく、ほうれい線を深くする一因となります。

遺伝は運命ではありません。 自分の骨格や肌質がほうれい線ができやすいタイプだと自覚することは、むしろアドバンテージです。なぜなら、他の人よりも早期から、より効果的な予防策を講じることができるからです。紫外線対策の徹底、保湿、表情筋の適切なトレーニングなど、後天的なケアによって、その進行を大幅に遅らせることは十分に可能です。

2. 急にほうれい線が濃くなる原因は?

昨日まで気にならなかったのに、ある日突然ほうれい線が深くなったように感じる…。その背景には、肌のコンディションや体調に急激な変化をもたらす、いくつかのトリガーが隠されています。

2-1. 急激な体重減少と栄養不足

短期間で無理なダイエットを行うことは、ほうれい線を急激に悪化させる最大の要因の一つです。

  • 顔の脂肪の急減: 顔の皮下脂肪は、皮膚を内側から支えるクッションの役割を果たしています。急激なダイエットでこの脂肪が失われると、皮膚が風船がしぼんだように余ってしまい、重力に負けてたるみ、ほうれい線として深く刻まれます。
  • 栄養失調によるコラーゲン減少: 肌のハリを構成するコラーゲンは、タンパク質やビタミンC、亜鉛などを原料として体内で作られます。極端な食事制限はこれらの栄養素の欠乏を招き、コラーゲンの生成を著しく妨げます。これにより肌は弾力を失い、たるみが加速するのです。

2-2. 極度の乾燥

肌の水分量は、見た目の印象を大きく左右します。

  • 表皮性のシワの発生: 肌が乾燥すると、角質層のバリア機能が低下し、水分が蒸発しやすくなります。これにより肌表面には無数の細かいシワ(乾燥小じわ)が発生します。この小じわがほうれい線の溝に沿って現れると、線が連結して見え、深く濃くなったように感じられます。
  • ハリの低下: 乾燥は表皮だけでなく、真皮層の機能低下にも繋がります。水分が不足した肌はハリを失い、全体的にしぼんだ印象になるため、ほうれい線のような構造的な溝がより目立ちやすくなります。季節の変わり目や、エアコンの効いた室内での長時間の滞在は特に注意が必要です。

2-3. 睡眠不足とストレス

「疲れると顔が老けて見える」というのは、科学的にも根拠があります。

  • 成長ホルモンの分泌低下: 質の良い睡眠中には、肌の修復と再生を促す成長ホルモンが分泌されます。睡眠不足が続くとこのホルモンの分泌が減少し、日中に受けたダメージ(紫外線など)の修復が追いつかなくなり、肌の老化が進行します。
  • コルチゾールの影響: 精神的なストレスを感じると、抗ストレスホルモンである「コルチゾール」が分泌されます。コルチゾールは、過剰になるとコラーゲンの生成を抑制し、分解を促進する作用があるため、肌の弾力低下に直結します。
  • 血行不良: 睡眠不足やストレスは自律神経のバランスを乱し、血行不良を引き起こします。これにより、肌細胞に必要な酸素や栄養素が届きにくくなり、肌のくすみやハリの低下を招き、ほうれい線を際立たせるのです。

これらの要因が単独、あるいは複合的に作用することで、ほうれい線は「急に」その姿を現したかのように感じられるのです。

3. 片方だけのほうれい線が目立つのはなぜ?

ほうれい線の深さに左右差があるのは、決して珍しいことではありません。その主な原因は、長年にわたる無意識の生活習慣や癖によって蓄積された、顔への非対称な負荷にあります。

3-1. 力学的・物理的な要因

  • 睡眠時の姿勢(横向き寝):
    毎日同じ方向を向いて横向きに寝る癖は、片側ほうれい線の最大の原因と言っても過言ではありません。下になっている側の頬が、一晩中(約6〜8時間)、枕に押し付けられ、圧迫され続けます。この持続的な圧迫が、皮膚や皮下組織のたるみを助長し、コラーゲン線維に癖をつけてしまうのです。これが何年、何十年と続くことで、明らかな左右差として現れます。
  • 頬杖をつく癖:
    無意識に、いつも同じ側の手で頬杖をついていませんか。これも横向き寝と同様に、片側の顔に持続的な圧力をかける行為です。特にデスクワーク中など、長時間同じ姿勢でいる方は注意が必要です。
  • 食事の際の噛み癖:
    食べ物を咀嚼する際、無意識に左右どちらか片方ばかりを使っていることがあります。よく使う側の筋肉(咬筋など)は発達し、使わない側は衰えます。この筋肉のアンバランスが、顔全体の構造的な歪みを生み、たるみの左右差、ひいてはほうれい線の深さの左右差に繋がります。

3-2. 全身の歪みからくる影響

  • 体の歪み(骨盤・背骨):
    バッグをいつも同じ肩にかける、脚を組む時はいつも同じ脚が上、といった癖は、骨盤や背骨の歪みを引き起こします。体は一枚の皮で繋がっているため、土台である体の歪みは、頸椎(首の骨)を通じて頭蓋骨、そして顔の筋肉のバランスにまで影響を及ぼします。結果として、顔の左右非対称性が強調され、ほうれい線にも差が生じることがあります。

3-3. 筋肉の使い方の非対称性

  • 表情の癖:
    片方の口角だけを上げて笑う、話す時に片側の眉だけが上がるなど、人にはそれぞれ表情の癖があります。こうした非対称な筋肉の使い方が長期間にわたることで、片側の皮膚にだけ深いシワが刻まれやすくなります。

これらの癖は一つひとつが小さなものですが、「時間」という要素が加わることで、無視できない大きな差となって現れます。 自分の無意識の癖に気づき、意識的に改善することが、これ以上の進行を防ぐための第一歩です。

4. 笑わない方がほうれい線はできませんか?

いいえ、それは大きな誤解です。むしろ、ほうれい線を予防・改善するためには、適度に笑い、表情筋を豊かに使うことが非常に重要です。

この誤解は、ほうれい線を「表情ジワ」の一種として捉えていることから生じます。しかし、ほうれい線の本質は、表情を作った時にできる一時的なシワ(動的シワ)ではなく、**頬のたるみによって生じる構造的な「溝」や「境界線」**です。

4-1. 笑うことのメリット:表情筋のトレーニング

顔には約30種類以上の表情筋があり、これらが互いに連携して複雑な表情を作り出しています。

  • 頬のリフトアップ効果:
    笑うという行為は、口角を上げる「口角挙筋(こうかくきょきん)」や、頬を高く持ち上げる「大頬骨筋(だいきょうこつきん)・小頬骨筋(しょうきょうこつきん)」といった、頬のリフトアップに不可欠な筋肉群をダイナミックに使う、最高のトレーニングです。これらの筋肉を日常的に使うことで、筋力が維持・向上し、頬の脂肪や皮膚を高い位置で支えることができます。
  • 血行促進効果:
    表情筋を動かすと、その周辺の血行が促進されます。これにより、肌細胞に新鮮な酸素と栄養素が効率的に届けられ、老廃物の排出もスムーズになります。結果として、肌のターンオーバーが正常化し、ハリやツヤのある健康的な肌を保つことに繋がります。

4-2. 笑わないことのデメリット:筋肉の廃用性萎縮

ほうれい線を気にするあまり、全く笑わない、無表情でいることを心がけると、どうなるでしょうか。

  • 表情筋の衰え(廃用性萎縮):
    使われない筋肉が衰えていくのは、腕や脚の筋肉と同じです。表情筋が衰えると、その上にある脂肪や皮膚を支える力が弱まり、重力に抗うことができずに垂れ下がってきます。 これが「たるみ」の正体であり、ほうれい線をより深く、長くする直接的な原因となるのです。
  • ネガティブな印象:
    医学的な側面だけでなく、無表情は周囲に「不機嫌」「疲れている」といったネガティブな印象を与え、コミュニケーションにも影響を及ぼしかねません。

もちろん、加齢によって肌の弾力(コラーゲンやエラスチン)が失われると、笑った時にできるシワが元に戻りにくくはなります。しかし、それは「笑うこと」が悪いのではなく、「肌の弾力が低下していること」が問題なのです。

結論として、恐れるべきは「笑うこと」ではなく、「無表情でいることによる筋肉の衰え」です。 日頃から紫外線対策や保湿を徹底して肌の弾力を守りつつ、心から笑って表情筋を豊かに使うことこそが、若々しい印象を保つための最良のアンチエイジングと言えるでしょう。

5. ヒアルロン酸は一度入れたら続けないとダメ?

いいえ、そのようなことは全くありません。途中でやめても、施術前より悪化することはなく、元の状態にゆっくりと戻るだけです。

この疑問は、「一度楽を覚えるとやめられないのでは?」「依存性があるのでは?」といった不安から生じることが多いですが、医学的には全く根拠がありません。

5-1. ヒアルロン酸の生体内での動態

ヒアルロン酸注入は、ほうれい線の溝の下にジェル状のヒアルロン酸製剤を注入し、物理的に皮膚を持ち上げて溝を目立たなくする治療です。

  • 生体吸収性:
    注入されたヒアルロン酸は、もともと人間の体内に存在する成分であり、異物ではありません。そのため、体内のヒアルロニダーゼという酵素によって、時間と共に少しずつ分解・吸収されていきます。このプロセスは非常に緩やかで、体に害を与えるものではありません。
  • 効果の持続期間:
    使用するヒアルロン酸製剤の架橋技術(分解されにくくする技術)や硬さにもよりますが、効果は一般的に約半年から2年程度持続します。持続期間が過ぎると、ヒアルロン酸は完全に体内に吸収され、施術前の状態に自然に戻ります。 途中でやめたからといって、急激に老け込んだり、ほうれい線が以前より深くなったりすることは絶対にありません。

5-2. なぜ多くの人が治療を「続ける」のか

では、なぜ多くの人がヒアルロン酸注入を継続するのでしょうか。それは**「依存性」ではなく「満足度」**が理由です。

  • QOL(生活の質)の向上:
    ほうれい線が目立たなくなることで、鏡を見るのが楽しくなったり、人前で自信を持って笑えるようになったり、メイクの時間が短縮されたりと、日々の生活の質が向上します。一度その快適さを知ると、ヒアルロン酸の効果が切れて元の状態に戻った際に、「またあの快適な状態に戻りたい」と感じるのは自然な心理です。
  • コラーゲン産生促進効果(Biostimulation):
    近年の研究では、ヒアルロン酸を注入した部位の周辺で、自身のコラーゲン(自己コラーゲン)の産生が促進されるという、副次的な美肌効果も報告されています。注入を継続することで、肌自体のハリや弾力が改善されることも期待できるのです。

ヒアルロン酸治療は、あくまで**「自分の意思で選択するアンチエイジングの一つの手段」**です。やめたい時にはいつでもやめられますし、また気になった時に再開することもできます。そのような気軽さも、ヒアルロン酸治療が世界中で支持されている理由の一つです。

6. 美顔器はほうれい線に本当に効果がありますか?

「全く効果がない」わけではありませんが、その効果は限定的であり、医療機関での治療と同等の結果を期待することは極めて困難です。

市販の美顔器は、あくまで**「日々のコンディションを整える」「老化の進行を緩やかにする」**といった予防やメンテナンスのツールと位置づけるのが適切です。

6-1. 主な美顔器の機能とその限界

  • EMS(Electrical Muscle Stimulation):
    • 機能: 電気刺激で表情筋を強制的に収縮させ、筋肉のトレーニング効果を狙うもの。
    • 効果: 表情筋の衰えによるたるみの**「予防」**や、むくみの改善には一定の効果が期待できます。
    • 限界: ほうれい線の原因は、筋肉だけでなく、脂肪の下垂、皮膚のゆるみ、骨の萎縮など複合的です。筋肉だけにアプローチしても、根本的な改善には至りません。また、不適切な使用はかえって表情ジワを悪化させるリスクも指摘されています。
  • RF(ラジオ波):
    • 機能: 高周波の熱エネルギーを肌の深部(真皮層)に届け、コラーゲン線維を収縮させると共に、新たなコラーゲン生成(創傷治癒反応)を促す。
    • 効果: 肌の**「引き締め」**やハリ感アップに繋がり、たるみによるほうれい線を目立ちにくくする効果が期待できます。
    • 限界: 市販の美顔器は、安全性を最優先に設計されているため、医療機関で使用されるRF治療器に比べて出力(エネルギー量)や到達深度が大幅に低く設定されています。 医療用が真皮深層〜皮下組織まで作用するのに対し、市販品は真皮上層部へのアプローチに留まるため、効果は穏やかで持続性も短くなります。
  • イオン導入・エレクトロポレーション:
    • 機能: 微弱な電流を利用して、ビタミンCやヒアルロン酸などの美容成分を肌の奥に浸透させる。
    • 効果: 肌の**「保湿」**を高め、乾燥による小じわを目立たなくするのに役立ちます。
    • 限界: 浸透させることができるのは、あくまで角質層レベルです。ほうれい線の根本原因である真皮層の構造を変化させるほどの力はありません。

6-2. 医療機器との決定的な違い

医療機関で行われるハイフ(HIFU)や高周波(RF)治療は、解剖学を熟知した医師の管理のもと、市販品とは比較にならない高出力のエネルギーを、ほうれい線の原因となっているSMAS筋膜や真皮層へピンポイントで照射します。だからこそ、目に見えるリフトアップ効果や持続性が得られるのです。

結論として、美顔器は「日々のスキンケアの延長線上にあるもの」と考えるべきです。 毎日の使用で肌のコンディションを良好に保つことはできますが、すでに深く刻まれてしまったほうれい線を劇的に改善することはできません。「予防・メンテナンス」と「積極的な改善治療」を区別し、目的に応じて賢く使い分けることが重要です。

7. マスク生活でほうれい線は悪化しますか?

はい、長期間にわたるマスク生活は、複数の要因からほうれい線を悪化させるリスクを高めます。 「マスク老け」という言葉が生まれたように、その影響は決して軽視できません。

7-1. 表情筋の運動不足と筋力低下

  • コミュニケーションの変化:
    マスクで顔の下半分が隠れていると、口元の動きで感情を伝える必要性が薄れます。これにより、会話中の表情が乏しくなり、口角を上げたり、頬を持ち上げたりする筋肉の使用頻度が激減します。使われない筋肉が衰える「廃用性萎縮」が、口周りの筋肉(特に口輪筋)で起こり、たるみを引き起こすのです。
  • 発声の抑制:
    マスクをしていると声がこもりやすいため、無意識に口の動きを小さくして話すようになります。これも表情筋の運動不足に拍車をかけます。

7-2. 口呼吸の常態化

  • 口輪筋の弛緩:
    マスクによる息苦しさから、鼻呼吸ではなく口呼吸が常態化しやすくなります。口をぽかんと開けている状態は、唇を閉じる役割を持つ**「口輪筋」が常に緩んでいる状態**です。この口輪筋は、頬全体の筋肉と連動しているため、その弛緩は顔下半分のたるみに直結し、ほうれい線を深くします。

7-3. マスクによる皮膚環境の悪化

  • 摩擦によるバリア機能の低下:
    マスクの着脱や、会話によるズレで生じる物理的な摩擦は、皮膚表面の角質層を傷つけ、肌のバリア機能を低下させます。バリア機能が低下した肌は、外部刺激に弱くなり、乾燥や炎症を起こしやすくなります。
  • 蒸れと乾燥の繰り返し:
    マスク内は呼気で高温多湿になりますが、マスクを外した瞬間に内部の水分が急速に蒸発します。この時、肌が本来持っている水分(天然保湿因子)まで一緒に奪われてしまい、かえって肌の乾燥を招きます(過乾燥)。乾燥は、肌のハリを失わせ、ほうれい線を目立たせる一因です。

これらの要因が複合的に作用することで、マスク生活はほうれい線を静かに、しかし確実に進行させるのです。意識的に口角を上げる運動を取り入れたり、保湿ケアを徹底したり、一人の時間には鼻呼吸を意識するなどの対策が求められます。

8. ダイエットするとほうれい線が深くなる?

はい、特に「急激かつ不健康な」ダイエットは、ほうれい線を顕著に深くする大きな原因となります。 近年、「オゼンピック顔(Ozempic Face)」という言葉が海外で話題になったように、急激な体重減少による顔の変化は深刻な問題です。

8-1. 顔の脂肪コンパートメントの萎縮

顔の皮下脂肪は、のっぺりとした一つの塊ではなく、いくつかの区画(コンパートメント)に分かれて存在し、それぞれが顔の立体感や若々しさを保つための重要な役割を担っています。

  • 支持組織の喪失:
    頬の高い位置にある**メーラーファットパッド(Malar Fat Pad)や、その少し下にある深部内側頬脂肪(Deep Medial Cheek Fat)**は、頬をふっくらと見せ、皮膚を支える土台です。急激なダイエットでは、これらの重要な脂肪が萎縮・減少してしまいます。
  • デフレーション(しぼみ)効果:
    この土台となる脂肪が失われると、その上を覆っていた皮膚は支えを失い、行き場をなくして垂れ下がります。これが、ほうれい線の溝を一気に深くする**「デフレーション(しぼみ)」**現象の正体です。風船の空気が抜けるとシワシワになるのと同じ原理です。

8-2. 皮膚の弾力性の急激な低下

  • 栄養不足によるコラーゲン破壊:
    極端な食事制限を伴うダイエットは、タンパク質、ビタミンC、亜鉛、鉄分といった、コラーゲンやエラスチンの生成に不可欠な栄養素の欠乏を引き起こします。これにより、新たなコラーゲンの生成がストップするだけでなく、既存のコラーゲンの分解が促進され、皮膚は弾力を失い、紙のように薄く、伸びやすくなってしまいます。
  • 皮膚の収縮が追いつかない:
    皮膚は、脂肪の減少スピードに合わせて収縮することができません。特に短期間での大幅な体重減少では、皮膚が余ってしまい、たるみとして顕在化します。

健康的なダイエットと不健康なダイエットの差は、この「スピード」にあります。 バランスの取れた食事と適度な運動を組み合わせ、1ヶ月に体重の3〜5%以内の減少を目安に、ゆっくりと時間をかけることが、ほうれい線を悪化させずに美しく痩せるための絶対条件です。

9. ボトックスはほうれい線に効きますか?

一般的に、ほうれい線そのものの改善を目的としたボトックス注射は、第一選択にはならず、限定的な効果しか期待できません。

この質問に的確に答えるには、ボトックスの作用機序と、ほうれい線の原因を正確に理解する必要があります。

9-1. ボトックスの作用と適応

ボトックス(A型ボツリヌストキシン製剤)は、神経から筋肉への命令伝達をブロックし、**筋肉の動きを一時的に弱める(麻痺させる)**薬剤です。そのため、眉間の縦ジワ、額の横ジワ、目尻のシワ(カラスの足跡)といった、**特定の表情筋の過剰な収縮によってできる「表情ジワ」**に対して、非常に高い効果を発揮します。

9-2. ほうれい線の原因とのミスマッチ

一方、ほうれい線の主な原因は、前述の通り、筋肉の動きではなく、**加齢による頬の組織(皮膚、脂肪、支持靭帯)の「たるみ」や「下垂」**です。たるみによって生じた構造的な溝に対して、筋肉の動きを止めるボトックスを注射しても、たるみ自体は改善しないため、直接的なリフトアップ効果は得られないのです。

9-3. 【応用編】ボトックスが補助的に有効なケース

ただし、一部の限定的なケースにおいて、ボトックスを補助的に使用することで、ほうれい線の見え方を改善できる場合があります。これは非常に高度な技術と解剖学的知識を要する応用テクニックです。

  • ガミースマイルを伴うほうれい線:
    笑った時に歯茎が大きく見える「ガミースマイル」の方は、上唇を強く引き上げる筋肉群(上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋など)の力が過剰に強い傾向があります。この筋肉にごく少量のボトックスを注射することで、上唇の過剰な引き上げを抑制し、笑った時のほうれい線の食い込みを浅く見せることができます。
  • 口角の下がりが原因のほうれい線:
    口角を下に引く「口角下制筋」の力が強いと、マリオネットラインが目立ち、ほうれい線もより長く、ハの字に見えやすくなります。この筋肉にボトックスを注射し、口角をきゅっと上向きにすることで、間接的にほうれい線の印象を和らげることが可能です。

結論として、ほうれい線の溝を直接埋めたり、たるみを引き上げたりする目的であれば、ヒアルロン酸注入や糸リフト、ハイフ(HIFU)などが標準的な治療法です。 ボトックスは、あくまで特定の筋肉の動きを調整するための「補助的」な選択肢と考えるのが適切です。

10. 治療後、いつから効果を実感できますか?

選択する治療法によって、効果を実感できるタイミングと、効果が最大化するまでのプロセスは大きく異なります。

10-1. 即時的な効果が期待できる治療

  • ヒアルロン酸注入:
    • 直後: 施術直後から、溝が浅くなったことを明確に実感できます。 注入されたヒアルロン酸が物理的に組織を押し上げ、溝を埋めるためです。
    • 1〜2週間後: 注入による若干の腫れやむくみが完全に引き、ヒアルロン酸が組織に馴染んで、より自然で安定した状態になります。この時期が仕上がりの完成と言えます。

10-2. 段階的に効果が現れる治療

  • 糸リフト(スレッドリフト):
    • 直後: 糸に付いたコグ(トゲ)で皮下組織を物理的に引き上げるため、施術直後からリフトアップ効果を実感できます。ただし、この時点では麻酔による腫れや、糸による引きつれ感も含まれます。
    • 1〜3ヶ月後: 腫れや引きつれ感が完全に落ち着き、糸の周囲で自己コラーゲンの生成(創傷治癒反応)が活発化します。このコラーゲンが肌の内部からハリと弾力を生み出し、リフトアップ効果をさらに高め、引き締まり感が加わります。この時期が**「効果の真のピーク」**と言えるでしょう。
  • ハイフ(HIFU):
    • 直後: 超音波の熱でSMAS筋膜や皮下組織のタンパク質が収縮するため、人によっては施術直後から若干の引き締まり感を感じることがあります。
    • 1〜3ヶ月後: ハイフの真の効果は、熱ダメージを受けた組織が修復される過程で、**新しいコラーゲンやエラスチンが大量に生成される(ネオコラゲネシス)**ことによって現れます。このプロセスには時間がかかるため、効果のピークは施術後1〜3ヶ月後に訪れ、徐々にリフトアップしていきます。
  • 高周波(RF)治療・RFマイクロニードリング:
    • ハイフと同様のメカニズムで、熱による創傷治癒反応を利用してコラーゲン生成を促します。そのため、効果が最大化するのも施術後1〜3ヶ月後が目安となります。治療を複数回繰り返すことで、より効果が高まります。

「すぐに結果が欲しい」のか、「ダウンタイムは少なく、徐々に自然に変化したい」のか。ご自身の希望やライフスタイルに合わせて、これらの効果発現のタイムラインを理解し、治療法を選択することが重要です。

まとめ

ほうれい線に関する10の疑問への回答を通じて、その原因が単なる「シワ」ではなく、骨格、肌質、生活習慣、加齢といった様々な要因が絡み合った「たるみ」のサインであることがお分かりいただけたかと思います。

遺伝的要因を嘆いたり、誤った情報に一喜一憂したりする必要はありません。大切なのは、まず自分のほうれい線の原因を正しく理解すること。そして、日々のセルフケアと、必要に応じた専門的な治療を賢く組み合わせることです。

この記事が、ほうれい線への理解を深め、あなた自身が納得のいくケアを選択するための一助となれば幸いです。前向きな一歩が、未来のあなたの自信に繋がることを願っています。

 

美容医療は 「自己肯定感を高めるための選択肢のひとつ」 という信念の もと、一人ひとりの美しさと真摯に向き合う診療スタイルを貫いています。現在は、アジアの美容外科医との技術交流や教育にも力を入れ、国際的なネットワークづくりにも取り組んでいます。

  • <所属学会>

  • 日本美容外科学会JSAS

  • 日本美容外科学会JSASPS

  • 日本形成外科学会

  • 乳房オンコプラスティック

  • <資格>

  • 日本外科学会専門医

  • コンデンスリッチファット療法認定医

  • Total Definer by Alfredo Hoyos 認定医

  • VASER Lipo 認定医

  • RIBXCAR 認定医

【監修医師】

Casa de GRACIA GINZA / GRACIA Clinic 理事長 美容外科医・医学博士 樋口 隆男 Takao Higuchi

18年間にわたり呼吸器外科医として臨床に携わり、 オーストラリアの肺移植チームでの勤務経験も持つ。外科医としての豊富な経験を土台に、10年前に美容外科へ転向。現在は東京・銀座と福岡に美容クリニックを展開し、これまでに10,000例以上の脂肪吸引、4,000例を超える豊胸手術を手がけている。特にベイザー脂肪吸引、ハイブリッド豊胸、脂肪注入豊尻、肋骨リモデリング(RIBXCAR)、タミータック、乳房吊り上げなどのボディデザインを得意とし、自然で美しいシルエットづくりに国内外から定評がある。