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2025.9.22
シミのよくある質問10選|専門家があなたの疑問をスッキリ解決

ふと鏡を見たとき、以前はなかったはずのシミに気づき、心を曇らせていませんか。

一口に「シミ」と言っても、その種類や原因は様々です。紫外線、加齢、ホルモンバランスの乱れなど、多くの要因が複雑に絡み合って現れます。自己流のケアではなかなか改善せず、「このシミは本当に消えるの?」「治療は痛いの?」といった疑問や不安をお持ちの方も多いことでしょう。

この記事では、美容皮膚科の専門家の視点から、シミに関する10のよくある質問に対し、科学的根拠に基づき、丁寧かつ詳細に解説していきます。シミの再発から、危険なシミとの見分け方まで、あなたの疑問をスッキリと解消します。

正しい知識こそ、シミのないクリアな肌への最短ルートです。この記事が、あなたの美肌作りにおける確かな一歩となることを心から願っています。

1. 一度取ったシミは再発しますか?

結論から言うと、同じ場所にシミが「再発」するように見えることは十分にあり得ます。 これを理解するためには、「真の再発」と「炎症後色素沈着(PIH)」、そして「新たなシミの出現」を区別して考える必要があります。

1-1. 炎症後色素沈着(Post-Inflammatory Hyperpigmentation, PIH)

レーザー治療は、標的となるメラニン色素に熱エネルギーを与えて破壊する行為です。これは、肌にとっては一種の制御された「火傷」や「炎症」と認識されます。この炎症反応の過程で、メラノサイト(メラニン産生細胞)が刺激され、治療前とは異なる新たなメラニンが生成されることがあります。これが「炎症後色素沈着」です。

  • 特徴: 元のシミがあった場所、あるいはその周辺に、もやもやとした薄茶色〜茶褐色の色ムラとして現れます。
  • 時期: レーザー治療後、一度綺麗になったように見えた肌が、3〜4週間後から再び色づき始めます。
  • 経過: これは異常な反応ではなく、多くの場合、治療後3ヶ月〜半年、長い方で1年かけて肌のターンオーバーと共に自然に薄くなっていきます。

このPIHを「再発」と捉えてしまう方が非常に多いですが、これは治療に伴う一時的な反応です。この期間に紫外線を浴びたり、肌を擦ったりすると、PIHが濃くなったり長引いたりする原因になるため、徹底した紫外線対策と保湿、そして刺激を与えない優しいスキンケアが極めて重要になります。

1-2. メラノサイトの活性が残存しているケース

レーザーはメラニン色素を破壊しますが、メラニンを作る工場であるメラノサイト自体を完全になくすわけではありません。 特に、長年紫外線を浴び続けてきた部位のメラノサイトは、常にメラニンを作れという指令を受け続けているため、非常に活性が高い状態にあります。

レーザーで一時的にメラニンがなくなっても、その下に控える活性化したメラノサイトが、少しの刺激(主に紫外線)で再びメラニンを過剰に産生し始めることがあります。これが「真の再発」に近い状態です。

1-3. 隠れシミ(潜在シミ)の表面化

皮膚の深い層には、まだ目に見えていない「隠れシミ」が存在することがあります。レーザー治療によって表面のシミが取れると、その下の隠れシミが肌のターンオーバーによって表面に押し上げられ、あたかもシミが再発したかのように見えることがあります。

再発を防ぐためには、治療して終わり、ではなく、むしろ治療後からが本番です。 継続的な紫外線対策、美白有効成分(ビタミンC、トラネキサム酸など)を含むスキンケアの導入、そして肌のターンオーバーを整える生活習慣が、クリアな肌を維持するための鍵となります。

2. 子供の頃のそばかすは消えますか?

遺伝的要因が強い「そばかす(雀卵斑:じゃくらんはん)」は、完全に消え去ることは稀ですが、年齢と共に色が薄くなる、あるいは数が減る傾向があります。

そばかすは、特定の遺伝子(MC1R遺伝子など)を持つ人に現れる、優性遺伝の形質です。そのため、根本的に「できない体質」に変えることはできません。

2-1. そばかすのライフサイクル

  • 幼少期〜学童期(5〜6歳頃): 日光を浴びる機会が増えるこの時期から、鼻を中心に頬にかけて、細かい斑点状の茶色いシミが現れ始めます。
  • 思春期(10代): ホルモンバランスの影響や、屋外での活動が最も盛んになるこの時期に、そばかすの数と色がピークに達します。
  • 成人期以降(20代〜): 紫外線を浴びる総量が減少し、肌の代謝も変化するため、多くの場合、色は徐々に薄くなり、目立たなくなっていきます。 全く消えてしまうわけではありませんが、「昔ほど気にならなくなった」と感じる方が多いのはこのためです。

2-2. そばかすと老人性色素斑との混在

注意が必要なのは、30代以降になると、子供の頃からのそばかすに加えて、紫外線ダメージの蓄積による新たなシミ「老人性色素斑」が混在し始めることです。そばかすが薄くなってきたと感じていたのに、頬骨の上などに少し大きめの、輪郭がはっきりしたシミが出てきた場合、それは老人性色素斑の可能性が高いです。

  • そばかす(雀卵斑): 鼻や頬に散らばる細かい斑点。色の濃さが季節(紫外線量)によって変動する。
  • 老人性色素斑: 紫外線が当たりやすい頬骨の上などにできやすい。輪郭が比較的はっきりしており、大きさは様々。季節による色の変動は少ない。

2-3. 治療について

そばかすは、光治療(IPL)やレーザートーニングで色を薄くし、目立たなくさせることが可能です。しかし、これはあくまで対症療法です。遺伝的な素因は変わらないため、治療後に紫外線対策を怠れば、容易に色は濃くなります。

そばかすは、欧米では「チャームポイント」として捉えられることも多い、個性の一つです。完全に消し去ることに固執するよりも、紫外線対策で上手にコントロールしながら付き合っていく、という視点を持つことも大切です。

3. レーザー後、お化粧はいつからできますか?

これは、受けたレーザーの種類と、肌の状態によって大きく異なります。 自己判断せず、必ず施術を受けたクリニックの指示に従ってください。

3-1. Qスイッチレーザーなど(かさぶたができるタイプ)

ピンポイントでシミを強く照射し、軽い火傷を起こしてかさぶたにし、メラニンを排出させる治療法です。

  • 施術直後〜テープ保護期間中:
    施術直後は、患部に軟膏を塗り、肌色の保護テープを貼ります。メイクは、このテープを貼っている部分を避ければ、施術当日から可能です。テープの上からコンシーラーやファンデーションを塗ることもできます。
  • テープが剥がれた後:
    テープは通常7〜14日間貼り続けます。自然に剥がれたり、クリニックの指示で剥がしたりした後の肌は、ピンク色の新しい皮膚が再生した、非常にデリケートな状態です。

    • お化粧開始の目安: テープが剥がれた翌日から可能ですが、赤みが強い場合や、浸出液が出ている場合はまだ避けるべきです。
    • 注意点: ファンデーションを塗る際も、クレンジングをする際も、絶対に擦らないことが鉄則です。スポンジや指で優しく置くように乗せ、クレンジングはポイントメイクリムーバーなどを使い、摩擦を避けて丁寧に落とす必要があります。

3-2. 光治療(IPL)やレーザートーニング(かさぶたができないタイプ)

マイルドなエネルギーで顔全体に照射し、肌のトーンアップや薄いシミの改善を目指す治療法です。ダウンタイムがほとんどないのが特徴です。

  • お化粧開始の目安: 原則として、施術当日からメイクが可能です。
  • 注意点: 施術後の肌は、見た目には分からなくても内部に熱を帯びており、乾燥しやすく敏感になっています。赤みやヒリヒリ感が強い場合は、当日のメイクは控え、保湿と冷却に専念しましょう。メイクをする際も、低刺激性の製品を選び、優しく行うことをお勧めします。

いずれの治療においても、施術後の肌は紫外線に対して極めて無防備です。SPF30・PA+++以上の日焼け止めを必ず使用し、帽子や日傘も併用して、徹底的に紫外線をブロックすることが、美しい仕上がりと色素沈着の予防に不可欠です。

4. シミとほくろの違いは何ですか?

シミとほくろは、見た目が似ているものもあり混同されがちですが、細胞レベルでその成り立ちが全く異なります。

4-1. 細胞レベルでの違い

  • シミ(老人性色素斑など):
    • 正体: 紫外線などの影響で、メラノサイトが過剰に作り出した「メラニン色素」が、皮膚の浅い層(表皮)に蓄積している状態。
    • 細胞: メラノサイトの「数」は正常ですが、「機能」が亢進しています。
    • 例えるなら: 白い紙に、茶色いインクが「染み込んだ」状態。
  • ほくろ(色素性母斑):
    • 正体: メラノサイトが変化した「母斑細胞(ぼはんさいぼう)」が、皮膚の浅い層から深い層(表皮〜真皮)にかけて、塊となって増殖したもの。
    • 細胞: 「母斑細胞」という特殊な細胞自体が「増えている」状態。良性の皮膚腫瘍に分類されます。
    • 例えるなら: 白い紙の上に、茶色い粘土が「盛り上がって乗っている」状態。

4-2. 臨床的な見分け方のポイント

  • 立体感:
    • シミ: 完全に平坦で、盛り上がりは全くありません。
    • ほくろ: 平坦なものもありますが、多くはわずかに盛り上がっているか、ドーム状に隆起しています。触ると立体感があるのが特徴です。
  • 色の濃淡と均一性:
    • シミ: 全体的に色が均一な茶褐色であることが多いです。
    • ほくろ: シミよりも色が濃い黒色〜濃褐色で、中心部が濃く辺縁が薄いなど、色に濃淡があることもあります。
  • 毛の有無:
    • ほくろの細胞(母斑細胞)は毛根に影響を与えることがあるため、ほくろから太い毛が生えてくることがあります。シミから毛が生えることはありません。

これらの違いから、治療法も根本的に異なります。シミはメラニン色素をターゲットとするレーザー治療が主ですが、ほくろは細胞の塊そのものを取り除く必要があるため、CO2レーザーで削り取ったり、外科手術で切除したりするのが一般的です。

5. 妊娠中にシミが濃くなるのはなぜ?

これは、妊娠によって引き起こされる、女性ホルモンの劇的な増加が直接的な原因です。

妊娠中は、胎盤の成長と維持、出産準備のために、女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌量が、非妊娠時の数十倍〜数百倍にまで増加します。

5-1. ホルモンとメラノサイトの関係

  • メラノサイト刺激作用:
    エストロゲンとプロゲステロンには、メラノサイト(メラニン産生細胞)を直接刺激し、メラニンの生成を強力に促進する作用があります。
  • MSH(メラノサイト刺激ホルモン)感受性の亢進:
    さらに、これらの女性ホルモンは、脳下垂体から分泌されるMSHに対するメラノサイトの感受性を高める働きもあります。これにより、普段と同じ量の刺激(紫外線など)でも、より多くのメラニンが作られてしまうのです。

5-2. 妊娠中に現れる特有の色素沈着

このホルモンの影響は、顔のシミだけに留まらず、全身に様々な色素沈着を引き起こします。

  • 肝斑(かんぱん)の発症・悪化:
    頬骨や額、口周りに左右対称にもやもやと広がる肝斑は、ホルモンバランスの乱れが主因とされるシミの代表格です。妊娠中に初めて発症したり、もともとあったものが濃くなったりすることは非常に多く、「妊娠性肝斑(Chloasma)」とも呼ばれます。
  • 既存のシミやそばかすの悪化:
    以前からあった老人性色素斑やそばかすも、このホルモンの影響で全体的に色が濃くなる傾向があります。
  • 全身の色素沈着:
    乳輪や外陰部の色が濃くなる、お腹の真ん中に黒い線(正中線)が現れる、脇の下が黒ずむといった変化も、全て同じメカニズムによるものです。

幸いなことに、これらの妊娠に伴う色素沈着は、出産を終え、ホルモンバランスが正常化する産後3ヶ月〜1年ほどで、自然に薄くなることがほとんどです。しかし、妊娠中に浴びた紫外線ダメージは蓄積されるため、妊娠中も刺激の少ない日焼け止めなどで紫外線対策を継続することが、産後の肌を美しく保つために重要です。

6. パソコンのブルーライトはシミの原因になりますか?

「主要な原因とは言えないが、リスクを高める可能性は否定できず、注意が必要」というのが、現時点での専門家のコンセンサスです。

シミの最大の原因が太陽光に含まれる紫外線(UV-A, UV-B)であることは、疑う余地のない事実です。一方、パソコンやスマートフォンから発せられるブルーライトは、紫外線よりも波長が長い「高エネルギー可視光線(High-Energy Visible Light, HEV)」の一種です。

6-1. ブルーライトの肌への影響

  • 到達深度:
    ブルーライトは、紫外線UV-Bが届く表皮だけでなく、UV-Aよりもさらに深い真皮層まで到達するという特徴があります。
  • 酸化ストレスの誘発:
    近年の研究で、ブルーライトを長時間浴び続けると、この真皮層で活性酸素種(ROS)を大量に発生させ、強力な酸化ストレスを引き起こすことが分かってきました。酸化ストレスは、コラーゲンやエラスチンを破壊してシワやたるみの原因になるだけでなく、メラノサイトを刺激する要因にもなります。
  • 持続的な色素沈着:
    いくつかの研究では、ブルーライトが暗く、持続性のある色素沈着を引き起こす可能性が示唆されています。紫外線による日焼けが数日で薄くなるのに対し、ブルーライトによる色素沈着は数週間にわたって残存するという報告もあり、その影響は軽視できません。

6-2. 日常生活におけるリスク評価

ただし、過度に恐れる必要もありません。日常生活でPCやスマホの画面から浴びるブルーライトのエネルギー量は、晴れた日に短時間屋外で過ごすだけで浴びる太陽光由来のブルーライト量に比べれば、ごくわずかです。

結論として、通常のPC作業で、ブルーライトだけが原因で急にシミができるという可能性は低いと考えられます。 しかし、毎日長時間(8時間以上など)にわたって至近距離で画面を見続ける生活を送っている場合や、もともと色素沈着を起こしやすい肌質の方は、リスクが積み重なる可能性があります。

対策としては、

  • PCやスマホのナイトモードを活用する。
  • ブルーライトカット機能のある保護フィルムを使用する。
  • 近年注目されている、ブルーライトや近赤外線からも肌を守る機能を持つ日焼け止めを使用する。

これらの対策を講じることで、将来的なリスクを低減させることができます。

7. コンシーラーでうまくシミが隠せません

コンシーラーでシミを「塗って隠す」というより「光と色でカモフラージュする」という発想を持つことが、自然で美しい仕上がりへの鍵です。

7-1. 失敗する原因

  • 色の選択ミス: 肌色より明るい色を選ぶと、シミのグレーっぽさが透けて、かえって悪目立ちする。
  • テクスチャーのミスマッチ: 乾燥しやすい目元に硬いスティックコンシーラーを使うと、シワに入り込んでよれてしまう。
  • 厚塗り: 隠したい一心で厚塗りすると、その部分だけ質感が異なり、不自然な「隠してます感」が出てしまう。
  • ぼかしすぎ: シミの中心部までぼかしてしまうと、コンシーラーが薄まってカバー力が失われる。

7-2. プロのテクニック:色と光を操る

  1. ステップ1:色調補正(カラーコレクション)
    ファンデーションの前に、シミの色を打ち消す「補色」のコントロールカラーを仕込みます。

    • 茶色いシミ(老人性色素斑): 茶色の補色である「オレンジ」「ピーチ」系のコンシーラーを、シミの部分にだけごく薄く乗せます。これにより、シミの茶色みが打ち消され、肌色に近づきます。
    • 赤みのあるシミ(炎症後色素沈着): 赤の補色である「グリーン」を薄く乗せます。
    • 灰色のくすみ: 「イエロー」が有効です。
  2. ステップ2:肌色コンシーラーの選択
    • 色: 必ず自分の肌色と全く同じか、ごくわずかに暗い色を選びます。フェイスラインの色で合わせるのがおすすめです。
    • テクスチャー:
      • 濃いシミ・小さいシミ: カバー力が高く、硬めのスティックタイプクリームタイプ
      • 薄いシミ・広範囲のシミ: 伸びが良く、乾燥しにくいリキッドタイプ
  3. ステップ3:乗せ方とぼかし方
    • ファンデーションを薄く塗った後、シミより一回りだけ大きくコンシーラーを乗せます。
    • 絶対に擦らず、コンシーラーと肌の「境界線」だけを、薬指の腹や清潔なスポンジ、小さなブラシでトントンと優しく叩き込むようにして馴染ませます。 シミの中心部は触らないのが鉄則です。
    • 最後に、粒子の細かいフェイスパウダーをブラシに含ませ、上からふんわりと乗せて固定します。

この3ステップを踏むことで、厚塗り感なく、まるでシミが元からなかったかのような自然な仕上がりが可能になります。

8. 市販のシミ取りクリームは効果がありますか?

「シミを完全に消し去る」ほどの劇的な効果は期待できませんが、「シミをこれ以上濃くしない」「全体的な肌のトーンを上げて、シミを目立ちにくくする」「シミを予防する」という点では、継続使用により十分な効果が期待できます。

市販の美白化粧品は、あくまで「化粧品」または「医薬部外品」に分類され、医師が処方する「医薬品」とは明確な違いがあります。

8-1. 市販品(医薬部外品)の役割と有効成分

医薬部外品の美白有効成分は、主に「メラニンの生成プロセスに介入し、過剰な生成を抑制する」ことを目的としています。

  • メラノサイトへの指令をブロック:
    • トラネキサム酸、カモミラET: シミの初期段階で起こる炎症や、メラノサイトを活性化させる情報伝達物質(プロスタグランジンなど)をブロックします。
  • チロシナーゼ活性の阻害:
    • ビタミンC誘導体、コウジ酸、アルブチン、4MSKなど: メラニンを生成する上で鍵となる酵素「チロシナーゼ」の働きを邪魔して、メラニンの合成を抑制します。
  • メラニンの排出促進:
    • プラセンタエキス、リノール酸Sなど: 肌のターンオーバーを促進し、すでに生成されたメラニンがスムーズに排出されるのを助けます。

これらの成分は、穏やかに作用し、安全性が高いため、毎日のスキンケアとして継続的に使用するのに適しています。主な目的は「予防」と「現状維持・軽度の改善」です。

8-2. 医療用医薬品との決定的な違い

美容皮膚科で処方される医薬品は、より直接的で強力な作用を持ちます。

  • ハイドロキノン: チロシナーゼ活性を強力に阻害するだけでなく、メラノサイト自体にダメージを与える作用があり、「肌の漂白剤」とも呼ばれます。効果が高い分、白斑やかぶれなどの副作用リスクも伴います。
  • トレチノイン: 表皮のターンオーバーを劇的に促進し、メラニンを強制的に排出させます。非常に強い皮むけや赤みを伴うため、医師の厳格な管理下での使用が必須です。

結論として、市販のクリームは、レーザー治療後のメンテナンスや、将来のシミ予防、肌全体のトーンアップには非常に有効なツールです。 しかし、すでに濃く定着してしまったシミを、クリームだけで完全に消すのは困難であり、その場合はレーザー治療などの積極的なアプローチを検討するのが現実的と言えるでしょう。

9. 顔以外のシミ(手の甲、背中)も取れますか?

はい、もちろん可能です。 手の甲、腕、デコルテ、背中などにできるシミも、その多くは顔のシミと同様、紫外線ダメージの蓄積による「老人性色素斑」です。そのため、顔のシミ治療に準じた方法で改善が期待できます。

ただし、体の皮膚は顔の皮膚とは異なる特性を持つため、いくつか注意すべき点があります。

9-1. 体の皮膚の特性と治療の注意点

  • ターンオーバーが遅い:
    体の皮膚は、顔に比べて表皮のターンオーバー(肌の生まれ変わり)のサイクルが1.5倍〜2倍程度遅いと言われています。これにより、以下のような影響が出ます。

    • 効果実感までの時間が長い: 治療効果が現れるまでに、顔よりも時間がかかることがあります。
    • 炎症後色素沈着(PIH)のリスクと期間: レーザー治療後のPIHが、顔よりもやや出やすく、また一度出ると消えるまでに時間がかかる傾向があります(半年〜1年以上かかることも)。
  • 皮脂腺が少ない:
    体の皮膚は皮脂腺が少なく、乾燥しやすいです。治療後は特に乾燥が顕著になるため、顔以上に念入りな保湿ケアが重要になります。
  • ケロイドのリスク:
    特に胸の中央(デコルテ)や肩、背中の上部などは、ケロイド(傷跡が赤く盛り上がる体質)の好発部位です。ケロイド体質の方は、レーザー治療が適さない場合があるため、必ず事前に医師に申告が必要です。

9-2. 部位別の主な治療法

  • 手の甲・腕:
    広範囲に散らばる細かいシミには光治療(IPL)が非常に効果的です。全体のくすみが取れ、ハリ感もアップするため、若々しい印象を取り戻せます。濃く、境界明瞭なシミにはQスイッチレーザーも用いられます。
  • 背中・デコルテ:
    こちらも広範囲のシミやくすみには光治療(IPL)が第一選択となることが多いです。また、ニキビ跡の色素沈着が混在している場合は、ケミカルピーリングやレーザートーニングを組み合わせることもあります。

治療後のケアは顔と同様、いえ、それ以上に「紫外線対策」と「保湿」が重要です。特に手の甲は、日焼け止めを塗っても手洗いですぐに落ちてしまうため、UVカット効果のある手袋を着用するなど、徹底した対策が求められます。

10. 危険なシミ(皮膚がん)との見分け方は?

ほとんどのシミやほくろは良性ですが、ごく稀に悪性のもの(皮膚がん)が紛れていることがあります。特に、悪性黒色腫(メラノーマ)は転移しやすく、生命に関わることもあるため、早期発見が極めて重要です。

皮膚科医は、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて診断しますが、セルフチェックのポイントとして、国際的に用いられている「ABCDEルール」を覚えておきましょう。

  • A : Asymmetry(非対称性)
    形が左右対称ではなく、いびつな形をしている。円や楕円ではなく、地図のような不規則な形状。
  • B : Border(境界)
    輪郭がギザギザ、しみ出し、色のにじみなど、周囲の皮膚との境界が不明瞭。
  • C : Color(色)
    色が均一ではなく、濃淡が混じっている。黒、茶色だけでなく、青、赤、白などが混ざり、多彩な色調を呈する。
  • D : Diameter(直径)
    直径が6mm以上ある。一般的な鉛筆の断面の直径が約6mmなので、それより大きいものは要注意。ただし、6mm以下でも悪性の場合もあります。
  • E : Evolving / Elevation(変化・盛り上がり)
    これが最も重要なサインです。

    • 大きさ: 短期間(数ヶ月単位)で急に大きくなる。
    • 形: 形が変わる、輪郭が変化する。
    • 色: 色が変化する、新しい色が加わる。
    • 症状: 盛り上がってくる、出血する、かゆみや痛みがある、表面がジクジクする。

「Ugly Duckling Sign(みにくいアヒルの子のサイン)」という考え方もあります。これは、自分の体にある他のほくろやシミと比べて、一つだけ明らかに見た目や性質が異なる「仲間はずれ」のものが存在する場合、それに注意するというものです。

これらの特徴が一つでも当てはまる場合や、「何かおかしい」と直感的に感じた場合は、絶対に自己判断せず、皮膚科専門医を受診してください。早期であれば、適切な治療で完治が可能です。

まとめ

シミに関する10の疑問を解説してきましたが、長年の悩みが少しでもクリアになったでしょうか。

シミ対策の基本は、なんと言っても「紫外線対策」と「保湿」です。日々の地道なケアが、未来の肌を大きく左右します。そして、できてしまったシミに対しては、その種類や状態に合った適切な治療法が存在します。

市販の化粧品、コンシーラーによるメイクアップ、そして美容皮膚科での専門的な治療。これらの選択肢を正しく理解し、上手に組み合わせることが、シミのない理想の肌への確実な道筋となります。まずは専門医に相談し、あなたのシミの正体を知ることから始めてみてください。

 

美容医療は 「自己肯定感を高めるための選択肢のひとつ」 という信念の もと、一人ひとりの美しさと真摯に向き合う診療スタイルを貫いています。現在は、アジアの美容外科医との技術交流や教育にも力を入れ、国際的なネットワークづくりにも取り組んでいます。

  • <所属学会>

  • 日本美容外科学会JSAS

  • 日本美容外科学会JSASPS

  • 日本形成外科学会

  • 乳房オンコプラスティック

  • <資格>

  • 日本外科学会専門医

  • コンデンスリッチファット療法認定医

  • Total Definer by Alfredo Hoyos 認定医

  • VASER Lipo 認定医

  • RIBXCAR 認定医

【監修医師】

Casa de GRACIA GINZA / GRACIA Clinic 理事長 美容外科医・医学博士 樋口 隆男 Takao Higuchi

18年間にわたり呼吸器外科医として臨床に携わり、 オーストラリアの肺移植チームでの勤務経験も持つ。外科医としての豊富な経験を土台に、10年前に美容外科へ転向。現在は東京・銀座と福岡に美容クリニックを展開し、これまでに10,000例以上の脂肪吸引、4,000例を超える豊胸手術を手がけている。特にベイザー脂肪吸引、ハイブリッド豊胸、脂肪注入豊尻、肋骨リモデリング(RIBXCAR)、タミータック、乳房吊り上げなどのボディデザインを得意とし、自然で美しいシルエットづくりに国内外から定評がある。