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2025.11.6
専門家が教えるヒアルロン酸の真実!誤解と本当の効果を解き明かす

「ヒアルロン酸配合」。この言葉を、ドラッグストアやデパートの化粧品売り場で目にしない日はない、と言っても過言ではないでしょう。まるで潤いの代名詞のように語られるこの成分ですが、その本当の力を正しく理解している人は、実はそれほど多くないのかもしれません。

「高い化粧水を使っているのに、いまいち効果が実感できない」「ヒアルロン酸は分子が大きいから肌に浸透しないって聞いたけど、本当?」「サプリメントで飲むのは意味がないの?」

Webマーケティングの世界で長年、美容と健康に関する情報を発信し続けてきた私自身、キャリアの初期にはこうした疑問の渦の中で、ただ情報を右から左へ流すだけの記事を書いていた苦い経験があります。しかし、数多くの皮膚科学の専門家や化粧品開発の研究者と対話する中で、ヒアルロン酸という成分の奥深さと、世間に溢れる情報の「誤解」に気づかされました。

これから、ヒアルロン酸の科学的な真実を、私が現場で得た知見や具体的なエピソードを交えながら、一つひとつ丁寧に解き明かしていきます。この情報を読み終える頃には、あなたは無数の選択肢の中から、自分にとって本当に必要なヒアルロン酸ケアを見極める「目」を手にしているはずです。

1. ヒアルロン酸の分子量と肌への浸透力

「高分子ヒアルロン酸は肌に浸透しないから意味がない」という説、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。これは、半分は正しく、そしてもう半分は大きな誤解を含んでいます。重要なのは、分子量の違いは優劣ではなく、肌へのアプローチ、つまり「役割」が全く異なるという点です。

肌表面を潤いのベールで包む「高分子ヒアルロン酸」

一般的に「ヒアルロン酸」として化粧品に配合されているものの多くは、この高分子タイプです。その名の通り分子が大きく、肌のバリア機能に阻まれて角質層の奥深くまで浸透することはできません。

「なんだ、やっぱり意味ないじゃないか」と思うのは早計です。高分子ヒアルロン酸の真価は、肌の表面にとどまり、強力な「潤いの膜」を形成することにあります。この膜が、肌内部の水分が蒸発していくのを防ぐ「蓋」の役割を果たしてくれるのです。

私自身、ひどい乾燥肌に悩んでいた時期、様々な保湿成分を試しましたが、最終的に立ち返ったのは、あえて高分子ヒアルロン酸を主成分にしたシンプルな化粧水でした。つけた瞬間に肌がラップで包まれたかのような、しっとりとした保護膜が形成される感覚。これにより、エアコンの効いた乾燥したオフィスでも、夕方まで肌のつっぱりを感じにくくなった経験は忘れられません。肌表面の乾燥、いわゆる「乾き」を今すぐどうにかしたい、という場合には、高分子ヒアルロン酸は非常に頼りになる存在です。

角質層を満たす貯水タンク「低分子ヒアルロン酸」

一方、高分子ヒアルロン酸を特殊な技術で細かく分解したのが「低分子ヒアルロン酸」です。成分表示では「加水分解ヒアルロン酸」や「アセチルヒアルロン酸Na(スーパーヒアルロン酸)」などと記載されます。

こちらは分子が小さいため、角質層の内部にまで浸透し、肌の内側で水分を抱え込むことができます。まるで、肌細胞の間に小さな貯水タンクをたくさん設置するようなイメージです。肌表面を潤す高分子タイプとは異なり、肌の内側からふっくらと潤うような、根本的な保湿感を高める効果が期待できます。

ただし、効果の実感には少し時間がかかるかもしれません。肌表面の即効性よりも、使い続けることで肌の水分保持能力そのものを底上げしていく、縁の下の力持ちのような存在と言えるでしょう。

結論として、高分子と低分子のどちらが良いということではありません。料理で塩と砂糖を使い分けるように、自分の肌が今どんな潤いを求めているのか、その目的によって使い分ける、あるいは両方がバランス良く配合された製品を選ぶのが、最も賢い選択なのです。

 

※関連記事:肌の潤いを保つ驚異的な保水力の秘密

2. 肌内部でのヒアルロン酸の働きを科学的に解説

化粧品として「外から補う」ヒアルロン酸の話をしてきましたが、そもそも私たちの肌内部、特に皮膚の本体とも言える「真皮層」に、ヒアルロン酸はもともと豊富に存在しています。この「内なるヒアルロン酸」の働きを知ることで、スキンケアの本当の意味が見えてきます。

真皮層は、肌のハリを司る「コラーゲン」という線維が網目のように張り巡らされ、その網目を「エラスチン」がバネのように支えることで、弾力のある構造を保っています。そして、そのコラーゲンとエラスチンの隙間をゼリー状になって埋め尽くし、クッションのように支えているのがヒアルロン酸なのです。

ヒアルロン酸の最も驚くべき特性は、その圧倒的な水分保持能力にあります。ヒアルロン酸は、自らの質量の約6000倍、つまり1gで6リットルもの水分を抱え込むことができると言われています。この力のおかげで、私たちの肌はみずみずしさとハリを保つことができています。

しかし、悲しいことに、この体内のヒアルロン酸は年齢と共に減少していきます。赤ちゃんの肌があれほどプルプルなのは、ヒアルロン酸の量がピークだから。それが20代を境に減少し始め、40代では赤ちゃんの頃の約半分にまで落ち込んでしまうのです。

真皮層のヒアルロン酸が減ると、コラーゲンやエラスチンを支えるクッションが失われ、肌全体の構造が崩れていきます。これが、シワやたるみといったエイジングサインの根本的な原因の一つです。

ここで一つ、非常に重要な点を明確にしておく必要があります。それは、化粧品で補うヒアルロン酸は、あくまで肌表面の「角質層」で働くものであり、真皮層まで届いて、減少した自己のヒアルロン酸を直接補充するわけではない、ということです。肌には外部からの異物の侵入を防ぐ強力なバリア機能があるため、化粧品が真皮層にまで到達することは基本的にありません。

では、スキンケアは無意味なのかというと、決してそうではありません。角質層をヒアルロン酸でしっかりと保湿し、肌のバリア機能を正常に保つことは、紫外線などの外的刺激から真皮層を守り、結果として内部のヒアルロン酸の劣化を防ぐことに繋がります。外からのケアは、今ある資産を「守る」ための重要な投資なのです。

3. 化粧水、美容液、クリーム、剤形による違い

ヒアルロン酸が配合された製品には、化粧水、美容液、クリームなど様々な剤形(テクスチャー)があります。これらは単に好みの使用感で選ぶだけでなく、それぞれの役割と配合されているヒアルロン酸の特性を理解して使い分けることで、スキンケアの効果を格段に高めることができます。

化粧水:潤いの「道筋」を作る

化粧水の主な役割は、洗顔後の肌に真っ先に水分を補給することです。ヒアルロン酸配合の化粧水は、肌表面を潤いの膜で覆ったり、角質層に浸透して水分を届けたりすることで、肌を柔らかく整えます。これにより、その後に使う美容液やクリームの美容成分が浸透しやすい「道筋」を作るという重要な役割を担っています。さっぱりした使用感のものが多く、低分子ヒアルロン酸が配合されている傾向にあります。

美容液:「集中ケア」で悩みに応える

美容液は、特定の肌悩みにアプローチするために、美容成分を高濃度で配合したスペシャルケアアイテムです。ヒアルロン酸を主役にした美容液の場合、高分子と低分子を複数組み合わせることで、肌の表面と内側(角質層)の両方から、立体的で多角的な保湿を目指す製品が多く見られます。

以前、私が化粧品開発のコンサルティングに関わった際、ある美容液のテクスチャー開発で最も苦心したのが、このヒアルロン酸の配合バランスでした。濃度を高くすれば保湿力は上がりますが、ベタつきや「モロモロ」と呼ばれるカスが出てしまい、使用感が著しく低下します。最高の保湿効果と心地よい使用感を両立させるため、分子量の異なる数種類のヒアルロン酸を0.1%単位で調整する、という気の遠くなるような作業が繰り返されていました。美容液一本一本には、そうした開発者の知恵と技術が凝縮されているのです。

クリーム:潤いに「蓋」をする

クリームの最大の役割は、化粧水や美容液で与えた水分や美容成分が逃げないように、油分でしっかりと「蓋」をすることです。スキンケアの最後に使うことで、保湿効果を長時間持続させます。クリームに配合されるヒアルロン酸は、肌表面に膜を張る高分子タイプが中心で、油分の膜と合わさることで、強力なバリアとなって水分の蒸発を防ぎます

  • 乾燥肌の方は、化粧水、美容液に加えて、クリームでの「蓋」は必須です。
  • 脂性肌の方も、肌内部の水分が不足している「インナードライ」の場合が多いので、オイルフリーのさっぱりした美容液やジェルでヒアルロン酸を補い、薄くクリームを塗ることをおすすめします。

このように、それぞれの剤形の役割を理解し、自分の肌状態に合わせてアイテムを重ねていくことが、ヒアルロン酸の効果を最大限に引き出すための鍵となります。

4. サプリメントの効果は科学的に証明されている?

「塗るだけじゃなく、飲んで内側からヒアルロン酸を補給したい」と考えるのは自然なことです。市場には数多くのヒアルロン酸サプリメントが存在しますが、その効果については専門家の間でも意見が分かれる、非常にデリケートなテーマです。

まず理解すべきなのは、口から摂取したヒアルロン酸が、そのままの形で肌に届くわけではないという事実です。ヒアルロン酸は高分子の糖の一種なので、胃や腸で消化酵素によってアミノ酸や糖にまで細かく分解され、吸収されます。そして、体内で再びヒアルロン酸として再合成される、という保証はありません。

この消化・吸収のプロセスから、「飲んでも意味がない」という説が根強く存在します。

しかし、近年では少し異なる見解を示す研究も出てきています。非常に分子量の小さい特定のヒアルロン酸を摂取した場合、腸管から吸収されて血中に移行し、皮膚の線維芽細胞(ヒアルロン酸やコラーゲンを作り出す細胞)を刺激することで、肌の水分量が改善した、という報告がいくつか存在するのです。

私個人の見解としては、サプリメントの効果を過度に期待するのは禁物だと考えています。一方で、ヒアルロン酸の「材料」となる成分を体内に補給するという意味合いや、それが何らかのシグナルとなって体内の産生能力に働きかける可能性は、完全には否定できないかもしれません。プラセボ効果、つまり「飲んでいる」という安心感が肌のコンディションに良い影響を与える側面もあるでしょう。

もし試すのであれば、スキンケアやバランスの取れた食生活という土台があってこその、補助的な「お守り」として捉えるのが健全な付き合い方です。一つのサプリメントに頼るのではなく、ヒアルロン酸の生成を助けるビタミンCや、タンパク質などを食事からしっかり摂ることの方が、より確実なインナーケアと言えるでしょう。

 

※関連記事:飲むヒアルロン酸は本当に意味がある?

 

5. ヒアルロン酸注入の持続期間とダウンタイム

スキンケアの領域を超え、美容医療におけるヒアルロン酸は、シワや溝を埋めたり、ボリュームを出したりするための「注入剤(フィラー)」として広く用いられています。ここでは、そのリアルな効果とリスクについて見ていきましょう。

効果は永久ではない。持続期間の目安は?

ヒアルロン酸注入の効果は永久ではありません。注入されたヒアルロン酸は、体内に元からある分解酵素によって、少しずつ吸収されていきます。

その持続期間は、使用する製剤の種類、注入する部位、そして個人の体質(代謝の速さ)によって大きく異なりますが、一般的には半年から2年程度が目安です。

  • 製剤の種類: ヒアルロン酸の粒子を結びつける「架橋」という技術が用いられており、この架橋が強い(硬い)製剤ほど、分解されにくく長持ちします。鼻や顎の輪郭形成には硬い製剤、唇や涙袋のような柔らかい部位にはソフトな製剤が使われます。
  • 注入部位: よく動かす口元や表情ジワなどは、分解が早い傾向にあります。

ダウンタイムの実際

ダウンタイムとは、施術を受けてから普段の生活に戻れるまでの期間のことです。ヒアルロン酸注入は比較的ダウンタイムが短い施術とされていますが、個人差があります。

  • 一般的な症状:
    • 腫れ・赤み: 注入直後から数日間。
    • 内出血: 注射針が毛細血管に当たると起こります。最初は青紫色ですが、1〜2週間かけて黄色っぽくなり、次第に消えていきます。メイクで隠せる程度の場合がほとんどです。
    • 痛み・違和感: 数日間、触ると軽い痛みや、何かが入っているような違’和感を感じることがあります。

私の友人A子がほうれい線に初めてヒアルロン酸注入をした時の話ですが、彼女は「直後は少しむくんだ感じがしたけど、マスクをすれば全然分からないレベル。内出血もファンデーションで隠せたし、翌日から普通に仕事に行けた」と話していました。そして1週間後には腫れも引き、鏡を見るたびに「5歳は若返った!」と喜んでいたのが印象的です。

忘れてはならない重篤なリスク

手軽なイメージのあるヒアルロン酸注入ですが、医療行為である以上、リスクはゼロではありません。最も注意すべきなのが、誤って血管内にヒアルロン酸を注入してしまう「血管閉塞」です。血流が途絶えることで、皮膚が壊死したり、最悪の場合、失明に至ったりするケースも報告されています。

これは非常に稀なケースですが、こうしたリスクを限りなくゼロに近づけるためには、解剖学を熟知し、経験豊富な医師のもとで施術を受けることが絶対条件となります。

6. 安全なクリニックを見極めるためのチェックリスト

ヒアルロン酸注入で後悔しないために、最も重要なのが「どこで、誰に施術してもらうか」というクリニック選びです。価格の安さや広告のイメージだけで選ぶのは非常に危険です。私がこれまでの取材経験から導き出した、安全なクリニックを見極めるためのチェックリストをご紹介します。

  • □ 医師の経歴と専門性を確認しましたか?
    • 理想は、皮膚の構造や顔面の解剖学を熟知している形成外科専門医や皮膚科専門医であること。公式サイトで医師の経歴や資格、所属学会などを必ず確認しましょう。症例写真の数だけでなく、その仕上がりの自然さも重要な判断基準です。
  • □ カウンセリングは丁寧で、時間をかけてくれますか?
    • 優秀な医師ほど、カウンセリングを重視します。以前取材したある名医は、「カウンセリングは、施術そのものと同じくらい重要。患者さんの理想と、医学的に可能なことのすり合わせを丁寧に行うことで、9割の失敗は防げる」と語っていました。メリットだけでなく、リスク、デメリット、費用、代替案までを、あなたが完全に納得するまで説明してくれるかを見極めましょう。
  • □ 使用するヒアルロン酸製剤について説明がありましたか?
    • 「ヒアルロン酸」と一括りにせず、どのメーカーの、どの種類の製剤を使うのかを明確に説明してくれるクリニックを選びましょう。国内で厚生労働省の承認を得ている製剤など、安全性が確立された製品を使用しているかは重要なポイントです。
  • □ 衛生管理は徹底されていますか?
    • 院内が清潔に保たれているか、施術に使う器具の滅菌は徹底されているかなど、基本的な衛生管理は必ずチェックしましょう。
  • □ 万が一の時のアフターフォロー体制は整っていますか?
    • 施術後に何かトラブルが起きた際に、すぐに対応してくれるか。緊急時の連絡先や対応フローが明確になっているかを確認しておくと安心です。

いくつかのクリニックでカウンセリングを受け、比較検討することをおすすめします。「この先生なら信頼できる」と心から思える医師に出会うまで、焦って決断しない勇気が大切です。

※関連記事:ヒアルロン酸注入の効果とメリット・デメリット

 

7. ヒアルロン酸の効果を長持ちさせる生活習慣

高価な化粧品を使ったり、勇気を出して美容医療を受けたりしても、日々の生活習慣が乱れていては、その効果は半減してしまいます。肌の内外にあるヒアルロン酸を守り、その効果をできるだけ長持ちさせるための生活習慣を意識しましょう。

  • 1. 紫外線対策を徹底する
    • 紫外線、特にUV-Aは、肌の奥深く(真皮層)にまで到達し、ヒアルロン酸やコラーゲンを破壊する最大の敵です。日焼け止めの使用はもちろん、帽子や日傘、サングラスなどを活用し、一年中紫外線から肌を守る意識を持ちましょう。これが最も重要と言っても過言ではありません。
  • 2. 抗酸化作用のある食事を心がける
    • 体内の「酸化(サビ)」は、ヒアルロン酸の分解を促進してしまいます。ビタミンCやビタミンE、ポリフェノールといった抗酸化物質を多く含む、緑黄色野菜、フルーツ、ナッツ、ベリー類などを積極的に食事に取り入れましょう。
  • 3. 質の良い睡眠を確保する
    • 睡眠中に分泌される成長ホルモンは、肌のターンオーバーを促し、日中に受けたダメージを修復する働きがあります。特に、入眠後最初の3時間は「肌のゴールデンタイム」と呼ばれます。深い眠りを確保するために、寝る前のスマートフォン操作は控えましょう。
  • 4. 保湿ケアを怠らない
    • 肌が乾燥していると、バリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなります。これは真皮層のヒアルロン酸にとっても良い環境ではありません。スキンケアでの保湿を徹底し、肌を常に潤った状態に保つことが、注入したヒアルロン酸を長持ちさせることにも繋がります。
  • 5. 適度な運動で血行を促進する
    • ウォーキングなどの適度な運動は、全身の血行を促進し、肌の隅々にまで栄養を届ける助けになります。肌の新陳代謝が活発になることで、健康な状態を維持しやすくなります。

これらの習慣は、ヒアルロン酸のためだけでなく、心と体の健康、そして総合的な美しさを育むための「土台作り」です。日々の小さな積み重ねが、数年後のあなたの肌を大きく左右します。

 

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8. よくある質問(Q&A)に専門家が回答

ここでは、カウンセリングの場や私の元に寄せられることが多い、ヒアルロン酸に関する素朴な疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q1. ヒアルロン酸配合の化粧品を使い続けると、肌が自ら潤う力を失って甘やかされてしまう、というのは本当ですか?

A1. そのような医学的根拠は一切ありませんので、ご安心ください。むしろ逆です。ヒアルロン酸で角質層を適切に保湿し、バリア機能をサポートすることで、肌は外部刺激から守られ、より健康な状態を保つことができます。肌本来の力を引き出すための「サポーター」と考えるのが正しい理解です。

Q2. ヒアルロン酸注入を繰り返すと、顔がパンパンに膨らんで不自然になりませんか?

A2. それは、医師の技術力とデザインセンス、そして過剰な注入が原因です。経験豊富な医師は、一度に大量に注入するのではなく、その人の骨格や加齢による変化を見極め、必要な場所に、必要な量だけを的確に注入します。不自然になるのは、ヒアルロン酸そのものが悪いのではなく、使い方に問題がある場合がほとんどです。信頼できる医師と、どのような仕上がりを目指すのか、ゴールをしっかり共有することが重要です。

Q3. 「ヒアルロン酸原液100%」と書かれた美容液は、すごく効果が高いということですか?

A3. これは誤解を生みやすい表現です。「原液」という言葉に法的な定義はなく、一般的には、化粧品の原料として使われるヒアルロン酸の水溶液を、そのまま、あるいは少し加工して製品にしたものを指します。ヒアルロン酸は粉末であり、それを100%の濃度で肌に塗ることは不可能です。保湿成分の主役として高濃度に配合されている、と解釈するのが良いでしょう。「原液」という言葉の響きだけで選ぶのではなく、使用感や他の配合成分とのバランスを見て判断することが大切です。

Q4. ヒアルロン酸でアレルギーを起こすことはありますか?

A4. 可能性はゼロではありませんが、非常に稀です。現在の注入用ヒアルロン酸は、バイオテクノロジーによって製造された非動物由来のものが主流であり、アレルギー反応のリスクは大幅に低減されています。化粧品に関しても、精製度の高いヒアルロン酸が使われていますが、他の配合成分に反応する可能性はあります。肌が敏感な方は、使用前にパッチテストを行うことをお勧めします。

9. 最新のヒアルロン酸研究トレンド

ヒアルロン酸をめぐる科学技術は、今この瞬間も進化を続けています。ここでは、少し未来のスキンケアや美容医療を垣間見るような、最新の研究トレンドをいくつかご紹介します。

  • より自然で長持ちする、新しい「架橋技術」
    • ヒアルロン酸注入の分野では、製剤をいかに長持ちさせ、かつ組織に馴染む自然な仕上がりにするか、というテーマが常に追求されています。従来の架橋剤の使用を減らし、ヒアルロン酸の分子同士を特殊な技術で結合させることで、より安全性と持続性を高めた新しい製剤の開発が進んでいます。これにより、アレルギーのリスクをさらに低減し、より滑らかな仕上がりが期待されています。
  • “塗るヒアルロン酸注射”は実現するのか?
    • 化粧品でヒアルロン酸を真皮層まで届ける、という夢のような技術への挑戦も続いています。ヒアルロン酸そのものをナノレベルまで超低分子化する技術や、角質層のバリアを一時的に緩めて浸透を促す「浸透促進技術(ドラッグデリバリーシステム)」の研究が盛んです。まだ研究段階ではありますが、将来的には、針を使わずに肌の奥深くにアプローチできる、新しい形のスキンケアが登場するかもしれません。
  • 再生医療への応用
    • ヒアルロン酸は、美容分野だけでなく、医療分野でもその重要性が増しています。特に関節治療の分野では、すり減った軟骨の潤滑剤として関節内に直接注射する方法が確立されています。さらに近年では、ヒアルロン酸を「足場」として利用し、そこに細胞を培養して組織を再生させる「再生医療」への応用研究が世界中で進められています。

これらの研究は、ヒアルロン酸が単なる保湿成分ではなく、人々の健康とQOL(生活の質)を向上させる無限の可能性を秘めていることを示しています。

10. ヒアルロン酸を賢く、効果的に利用する方法

これまで見てきたように、ヒアルロン酸はその種類や使い方によって、全く異なる顔を見せます。最後に、情報に振り回されず、あなたがヒアルロン酸と賢く付き合っていくための具体的なアクションプランを提案します。

  • ステップ1:自分の「目的」を明確にする
    • まずは、あなたの肌が何を求めているのかを考えましょう。「とにかく今の表面的なカサつきを抑えたい」のであれば、高分子ヒアルロン酸主体のクリームや化粧水が有効です。「肌の内側から潤うような、根本的な保湿力を高めたい」のであれば、低分子ヒアルロン酸配合の美容液を継続して使うのが良いでしょう。
  • ステップ2:化粧品の「成分表示」を見る習慣をつける
    • 「ヒアルロン酸Na」は高分子、「加水分解ヒアルロン酸」は低分子、といったように、成分表示からその製品の狙いをある程度推測することができます。この知識があるだけで、広告のイメージだけでなく、より本質的な製品選びが可能になります。
  • ステップ3:サプリメントは「補助輪」と心得る
    • インナーケアの基本は、あくまでバランスの取れた食事、質の良い睡眠、そしてストレス管理です。サプリメントは、その土台をサポートするための「補助輪」と考え、過度な期待はしないこと。
  • ステップ4:美容医療を考えるなら、「情報収集」を徹底する
    • もしヒアルロン酸注入に興味があるなら、すぐに一つのクリニックに決めるのはやめましょう。最低でも2〜3つのクリニックでカウンセリングを受け、医師の考え方や技術、相性を比較検討してください。そのプロセス自体が、あなたにとって最高の結果をもたらすための重要なステップです。

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ヒアルロン酸との上手な付き合い方が、未来のあなたを創る

ヒアルロン酸は、決して若返りの魔法の薬ではありません。しかし、その科学的な特性を正しく理解し、自分の目的や肌状態に合わせて、化粧品、サプリメント、美容医療といった選択肢を賢く使い分けることができれば、これほど頼りになる「潤いのパートナー」はいないでしょう。

大切なのは、溢れる情報や誇大な広告に一喜一憂するのではなく、あなた自身の肌と真摯に向き合うことです。なぜ乾燥するのか、どんな潤いを求めているのか。その声に耳を澄まし、正しい知識という羅針盤を持って、最適なケアを選択していく。

その知的なスキンケアの積み重ねこそが、一過性の美しさではなく、5年後、10年後も健やかに輝く、未来のあなた自身を創り上げていくのです。

 

美容医療は 「自己肯定感を高めるための選択肢のひとつ」 という信念の もと、一人ひとりの美しさと真摯に向き合う診療スタイルを貫いています。現在は、アジアの美容外科医との技術交流や教育にも力を入れ、国際的なネットワークづくりにも取り組んでいます。

  • <所属学会>

  • 日本美容外科学会JSAS

  • 日本美容外科学会JSASPS

  • 日本形成外科学会

  • 乳房オンコプラスティック

  • <資格>

  • 日本外科学会専門医

  • コンデンスリッチファット療法認定医

  • Total Definer by Alfredo Hoyos 認定医

  • VASER Lipo 認定医

  • RIBXCAR 認定医

【監修医師】

Casa de GRACIA GINZA / GRACIA Clinic 理事長 美容外科医・医学博士 樋口 隆男 Takao Higuchi

18年間にわたり呼吸器外科医として臨床に携わり、 オーストラリアの肺移植チームでの勤務経験も持つ。外科医としての豊富な経験を土台に、10年前に美容外科へ転向。現在は東京・銀座と福岡に美容クリニックを展開し、これまでに10,000例以上の脂肪吸引、4,000例を超える豊胸手術を手がけている。特にベイザー脂肪吸引、ハイブリッド豊胸、脂肪注入豊尻、肋骨リモデリング(RIBXCAR)、タミータック、乳房吊り上げなどのボディデザインを得意とし、自然で美しいシルエットづくりに国内外から定評がある。