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2026.1.11
糸リフトの種類の違いを徹底比較!PDO・PLLA・PCL、あなたに最適な糸はどれ?

「糸リフトに興味があるけれど、クリニックのサイトを見ても種類が多すぎて何が違うのか分からない」「PDO、PLLA、PCL…アルファベットが並んでいて、どれが自分に合うのかさっぱり…」
そんな悩みを抱えていませんか? 私が日々のカウンセリングで最も多く受けるご質問の一つです。無理もありません、糸リフトの世界は日進月歩で、数年前の常識が今では通用しないことも多いのです。

重要なのは、糸リフトの効果は「どの素材を選ぶか」によって劇的に変わるという事実です。リフトアップの持続期間、肌のハリやツヤといった「肌質改善」の効果、そして術後の馴染みやすさ。これらはすべて、糸の主成分であるPDO(ポリジオキサノン)PLLA(ポリ乳酸)PCL(ポリカプロラクトン)の違いによって決まります。

ここでは、美容医療の現場で培った専門的な知見に基づき、これら3つの主要な素材の違いを徹底的に比較・解説します。単なる知識の羅列ではなく、あなたの悩みが「たるみ」なのか「ハリ不足」なのか、そして「持続期間」をどれだけ重視するかによって、どの糸が最適解となり得るのか、その選び方の核心に迫ります。

1. なぜ糸リフトには様々な種類の糸があるの?

そもそも、なぜこんなにも多くの種類の糸が存在するのでしょうか。それは、患者様の悩みや肌質、求める効果が一人ひとり全く異なるからです。

想像してみてください。Aさんは「フェイスラインのもたつきを、とにかく強く引き上げたい」。Bさんは「たるみも気になるけど、それ以上に肌のハリがなくなってきたのを改善したい」。Cさんは「引き上げたいけど、仕事柄ダウンタイムは絶対取れないし、とにかく長持ちさせたい」。

もし、糸リフトの糸が1種類しかなかったら、これらすべての要望に応えることは不可能です。Aさんのような強いリフトアップを求める方には、硬くて太い、強力なトゲ(コグ)を持つ糸が必要かもしれません。しかし、その糸をBさんのような肌質改善を求める方に使うと、硬すぎて違和感が出たり、求めているハリ感とは違う結果になったりする可能性があります。

糸リフトの基本的なメカニズムは、以下の2段階で構成されています。

第1段階(即時的効果):糸に付いている「トゲ(コグ)」を皮下組織に引っ掛けて、物理的に皮膚を引き上げる。

第2段階(中長期的効果):挿入された糸が「異物」として認識され、その周囲にコラーゲンエラスチンといった肌の弾力成分を生成しようとする「創傷治癒反応」が起こる。糸が体内でゆっくりと吸収される過程で、この反応が持続する。

つまり、糸リフトは「物理的に引き上げる力」と「肌質を育てる力」の両方を併せ持つ施術です。そして、「糸の素材(PDO・PLLA・PCL)」の違いは、主に第2段階の効果(吸収速度=コラーゲン生成の持続期間)と、コラーゲン生成の「質」や「強さ」に影響を与えます。

患者様の多様なニーズに応えるため、メーカー各社は「吸収速度」や「柔軟性」、「コラーゲン生成能力」が異なる素材を開発し、その結果としてPDO・PLLA・PCLといった様々な種類の糸が誕生したのです。

関連記事:初めての糸リフトで後悔しない!効果・費用・ダウンタイムの全知識

2. PDO(ポリジオキサノン)糸:吸収が早く肌のハリに

PDO(ポリジオキサノン)は、数ある糸リフトの素材の中で、最も古くから使用されている素材です。もともと外科手術の際に体内を縫合するために開発された「溶ける糸」であり、数十年にわたる医療現場での使用実績があります。この圧倒的な安全性とデータの蓄積が、PDOの最大の強みと言えるでしょう。

PDO糸は、体内に挿入されると約6ヶ月から1年かけてゆっくりと加水分解され、最終的には水と二酸化炭素になって完全に吸収されます。この吸収されるプロセスにおいて、糸の周囲にコラーゲン繊維が活発に生成されます。

私自身の臨床経験でも、PDO糸を挿入した部位は、数ヶ月後に肌の密度が高まり、内側から押し返すようなハリ(弾力)が生まれるのを実感します。リフトアップ効果そのものの持続は、他の素材に比べてやや短い傾向にありますが、この「肌質改善効果」を高く評価する医師は少なくありません。

特に、肌が薄く、乾燥しがちな方や、たるみはまだ軽度だが「最近、肌に元気がない」と感じる方にとって、PDOは非常に良い選択肢となります。また、「糸リフトがどんなものか一度試してみたい」という初めての方にも、万が一の際にも吸収が早いために修正がしやすい(あるいは自然に元に戻る)という点で、心理的なハードルが低い素材です。

PDO(ポリジオキサノン)の特性
メリット
  • 医療用縫合糸としての長い歴史と高い安全性。
  • 肌のハリ、ツヤ、引き締め効果(肌質改善)が高い。
  • 吸収が早いため、初めての糸リフトでも試しやすい。
  • アレルギー反応などのリスクが極めて低い。
デメリット
  • リフトアップ効果の持続期間が比較的短い(約半年~1年)。
  • 他の素材に比べ、コラーゲン生成力がややマイルド。
向いている人
  • 糸リフトが初めての方。
  • たるみと同時に、肌のハリや弾力不足も改善したい方。
  • 比較的、軽度~中程度のたるみが気になる方。

3. PLLA(ポリ乳酸)糸:コラーゲン生成効果が高い

PLLA(ポリ乳酸)は、PDOと同様に医療分野で使用されてきた素材ですが、その最大の特徴は「コラーゲン生成能力の高さ」にあります。PLLAは、皮下組織に挿入されると、PDOやPCLよりも強力に線維芽細胞を刺激し、糸の周囲に太く強固なコラーゲンの「カプセル」を形成する性質があります。

このため、PLLAは「溶けるコラーゲンブースター」や「ボリュームアップ」の目的でも使用されることがあります。例えば、頬がこけて見える方や、深いほうれい線に悩む方に対して、PLLA糸を挿入することで、物理的なリフトアップと同時に、失われたボリュームを内側から補うような効果が期待できるのです。

素材としてのPLLAは、PDOに比べてやや硬さがあります。この「硬さ」が、しっかりとしたリフトアップ力を生み出す一因にもなりますが、一方で、皮膚が非常に薄い方や、表情を大きく動かす部位(口元など)に使用する際は、医師の高度な技術が求められます。不適切な層に挿入すると、糸のラインが浮き出たり、違和感が出たりするリスクがPDOよりも高まるためです。

吸収までの期間は約1年半から2年と、PDOよりも長く持続します。糸が溶けた後も、生成された自身のコラーゲン組織が土台として残るため、長期的なアンチエイジング効果が期待できる素材です。

私がPLLAを積極的に使用するのは、加齢により皮膚全体のボリュームが失われ、肌が痩せてしまっている方です。単に引き上げるだけでなく、「肌を育てる」「土台を再構築する」という観点で、非常に強力な武器となります。

PLLA(ポリ乳酸)の特性
メリット
  • 3素材の中でコラーゲン生成能力が最も高い。
  • リフトアップ効果と同時に、肌のボリュームアップも期待できる。
  • 持続期間が比較的長い(約1年半~2年)。
デメリット
  • 素材が比較的硬いため、皮膚が薄い人には不向きな場合がある。
  • 医師の技術力によっては、違和感や凸凹のリスクがPDOより高い。
向いている人
  • 肌のハリや弾力を強力に改善したい方。
  • たるみと同時に、頬のコケなどボリュームロスも気になる方。
  • PDOでは物足りなさを感じたことがある方。

4. PCL(ポリカプロラクトン)糸:持続期間が最も長い

PCL(ポリカプロラクトン)は、これまで紹介した2つの素材と比べて、最も新しく登場した素材の一つです。その最大の特徴は、ずばり「持続期間の長さ」です。

PCLは非常にゆっくりと分解される性質を持っており、体内に吸収されるまでに約2年〜3年もの期間を要します。これは、PDOの約2〜3倍の長さです。リフトアップ効果の持続性を最優先に考える方にとって、PCLは現在最も有力な選択肢と言えます。

もう一つの特筆すべき点は、その「柔軟性」です。PCLは非常にしなやかで柔らかい素材であり、挿入後に皮下組織とよく馴染みます。特にフェイスラインや首筋など、表情によってよく動く部位に使用しても、突っ張り感や違和感が出にくいのが大きなメリットです。

私自身の経験でも、例えば接客業や営業職の方など、人前で表情豊かに話す必要がある方には、PCLの柔軟性は非常に喜ばれます。術後のダウンタイム中に見られがちな「引きつれ感」も、PCLは比較的少ない印象です。

一方で、コラーゲン生成能力に関しては、PDOやPLLAに比べるとややマイルドであるとされています。PCLの主な役割は、その柔軟な糸自体が長期間にわたって組織を支え続けることによる「持続的なリフトアップ」です。もちろんPCLもコラーゲンを生成しますが、PLLAのように積極的に肌を「育てていく」というよりは、現状を「長く維持する」というイメージが近いかもしれません。

「とにかく長持ちさせたい」「術後の違和感や引きつれが怖い」というニーズを持つ方には、PCLが最も適しているでしょう。

PCL(ポリカプロラクトン)の特性
メリット
  • 3素材の中で吸収速度が最も遅く、持続期間が最も長い(約2年~3年)。
  • 素材が非常に柔軟でしなやか。
  • 表情の動きによく馴染み、術後の違和感や引きつれが出にくい。
デメリット
  • コラーゲン生成能力はPLLAやPDOに比べるとマイルド。
  • 万が一修正したい場合も、溶けるまでに時間がかかる。
向いている人
  • リフトアップ効果の持続期間を最優先する方。
  • 術後の引きつれや違和感を最小限にしたい方。
  • 表情を豊かに動かす職業の方。

関連記事はこちら:糸リフトのダウンタイム完全ガイド|腫れ・痛み・ひきつれの経過と過ごし方

5. 糸の「トゲ(コグ)」がリフトアップ効果を左右する

ここまで「素材(PDO・PLLA・PCL)」の違いについて詳しく解説してきましたが、糸リフトの効果を決めるもう一つの非常に重要な要素があります。それが、糸の「トゲ(コグ)」です。

冒頭で、糸リフトの第1段階の効果は「トゲを皮下組織に引っ掛けて物理的に引き上げること」だと説明しました。この「引っ掛ける力」、すなわちリフトアップ力の強さそのものを決定しているのが、コグなのです。

素材(PDO, PLLA, PCL)が「持続期間」や「肌質改善効果」といった中長期的な効果を左右するのに対し、コグは「どれだけ強くたるみを引き上げられるか」という即時的な効果に直結します。

極端な話、いくら持続期間の長いPCL素材を使っても、そのコグが貧弱であれば、強いリフトアップは期待できません。逆に、吸収の早いPDO素材でも、非常に強力なコグが付いていれば、術直後の引き上がりは強くなります。

コグの形状や製造方法は、メーカーによって様々ですが、主に以下のような種類があります。

コグの種類 製造方法 特徴 リフト力
カッティングタイプ 糸に切り込みを入れてトゲを作る(従来型) トゲが鋭いが、切り込みを入れた分、糸の強度がやや低下する可能性がある。 中~高
モルディングタイプ 鋳型(いがた)に素材を流し込み、トゲごと成形する トゲが大きく丸みを帯びており、組織をしっかり掴む。糸の強度が落ちない。 高~非常に高い
メッシュタイプ 糸自体が網目(メッシュ)状になっている 網目の中に自分の組織が入り込むことで固定。コラーゲン生成も強力。 中(リフト力+肌質改善)
アンカータイプ 糸に別のパーツ(円錐形のコーンなど)を取り付ける 点で組織を固定し、強いリフト力を生む。 非常に高い

最近のトレンドとして、強いリフト力を求める場合は「モルディングタイプ」のコグが主流になっています。これは、糸の強度を保ったまま、大きく強力なトゲを形成できるため、重力に負けそうなたるみをしっかりと支えることができるからです。

つまり、理想の糸リフトとは、「自分の悩みに合った素材(PDO, PLLA, PCL)」「たるみの度合いに合ったコグ(モルディングなど)」の最適な組み合わせによって実現されるのです。

6. ショッピングリフトとの違いと使い分け

ここで、カウンセリングの現場で非常に多くの方が混同されている「糸リフト」と「ショッピングリフト(美容鍼のような短い糸)」の違いについて、明確にしておく必要があります。

これらは、同じ「糸」を使った施術ですが、その目的とメカニズムは全く異なります。

糸リフト(コグ付きリフト)
ここまで解説してきた通り、「コグ(トゲ)」が付いた比較的長い糸(10cm以上)を使用します。主な目的は、コグを皮下組織に引っ掛けて、たるんだ皮膚を物理的に引き上げること(リフトアップ)です。挿入する本数は、片側で数本〜10本程度が一般的です。

ショッピングリフト(ショートスレッド)
一方、ショッピングリフトは、「コグ(トゲ)がない」、髪の毛ほどの細さで数cm程度の「短い糸」を使用します。この短い糸を、美容鍼のように皮膚の浅い層(真皮下)に、数十本〜100本以上という単位で格子状に挿入していきます。
主な目的は、たるみを引き上げることではなく、挿入された大量の糸がコラーゲン生成を促すことによる「肌質の改善(ハリ・ツヤ・弾力アップ)」「毛穴の引き締め」です。物理的なリフトアップ力は、ほぼありません。

項目 糸リフト(コグ付きリフト) ショッピングリフト(ショートスレッド)
糸の形状 長く、トゲ(コグ)がある 短く、トゲ(コグ)がない
主な目的 たるみの物理的な引き上げ(リフトアップ) 肌質の改善(ハリ・ツヤ・引き締め)
挿入本数(目安) 片側 3本~10本程度 全顔 50本~100本以上
ダウンタイム 引きつれ感、腫れ、内出血(数日~2週間) 細かい内出血(1~2週間)

つまり、「フェイスラインのもたつきを引き上げたい」という悩みに対して、ショッピングリフトを選択するのは間違いです。その場合は、コグ付きの糸リフト(PDO, PLLA, PCL)が必要になります。

実際の臨床現場では、これらを組み合わせて使用することがよくあります。例えば、

  • まずPCLのコグ付き糸でフェイスラインをしっかり引き上げ(リフトアップ)。
  • さらに、PDOのショッピングリフトを頬全体に挿入し、肌全体のハリ感を底上げする(肌質改善)。

このように、目的の異なる糸を使い分けることで、より総合的な若返りを図ることが可能です。

参考ページ:糸リフトの失敗例から学ぶ!後悔しないためのクリニック選びと対策法

7. あなたの悩みに合った糸リフトの選び方

ここまで学んできた「素材(PDO, PLLA, PCL)」と「コグ」、「ショッピングリフトとの違い」を踏まえて、ご自身の悩みに最適な糸リフトの選び方を具体的に整理しましょう。

重要なのは、「何を一番優先したいか」をご自身の中で明確にすることです。すべてを100%満たす完璧な糸は存在しないため、優先順位を決めることが、満足のいく結果への第一歩となります。

以下に、代表的な悩みのタイプごとにおすすめの選択肢をまとめました。

あなたの悩み・希望 推奨される素材・選択肢 その理由
タイプA:
とにかく持続期間を最優先したい。頻繁に通院したくない。
PCL (ポリカプロラクトン) 吸収速度が約2年~3年と最も遅く、長期間リフト効果が持続するため。
タイプB:
たるみも気になるが、肌のハリや弾力も強力に改善したい。
PLLA (ポリ乳酸) コラーゲン生成能力が最も高く、肌を内側から育てる効果が非常に強いため。
タイプC:
フェイスラインのもたつきを、強力に引き上げたい
モルディングタイプのコグを持つ糸(素材はPCL, PLLA, PDOいずれも可) リフトアップ力は素材よりも「コグの形状」が重要。強力な固定力を誇るモルディングコグが最適。
タイプD:
糸リフトが初めてで不安。まずは試してみたい。肌の引き締めもしたい。
PDO (ポリジオキサノン) 歴史が長く安全性が確立されている。吸収が早いため修正も容易。肌のハリ改善効果も高い。
タイプE:
たるみはないが、毛穴や肌のキメが気になる。
ショッピングリフト(トゲなしの短い糸) リフトアップ目的ではなく、肌質改善・引き締め・毛穴対策に特化した施術であるため。
タイプF:
術後の「引きつれ感」や「違和感」がとにかく心配。
PCL (ポリカプロラクトン) 素材が非常に柔軟でしなやかなため、表情の動きによく馴染み、違和感が出にくい。

ご自身の悩みがどのタイプに近いか、当てはめてみてください。もちろん、実際にはこれらの悩みが複合しているケースがほとんどです。その場合は、医師がこれらの素材やコグの種類を組み合わせて、あなただけのオーダーメイドの治療法を提案することになります。

参考:糸リフトの費用はいくら?本数・種類別の料金相場とクリニックの選び方

8. 医師はどのように糸を使い分けているのか

熟練した医師は、患者様のカウンセリングの際、単に「PCLが良いですよ」といった素材だけの話はしません。患者様の顔を立体的に診察し、多くの要素を考慮して最適な糸を頭の中で組み立てています。

私たちが「この人にはこの糸の組み合わせがベストだ」と判断するまでに、主に以下の4つのポイントを詳細に分析しています。

  1. 皮膚の厚みと硬さ
    • 皮膚が薄い方:硬いPLLA糸を浅い層に入れると、糸の輪郭が浮き出るリスクがあります。その場合、柔軟なPCLを選択するか、PLLAでも非常に深い層に挿入する技術が求められます。
    • 皮膚が厚く硬い方:リフトアップ効果を出すためには、PDOのような比較的マイルドな糸では力不足になることがあります。PCLやPLLAの強力なモルディングコグでなければ、組織を持ち上げられないケースが多いです。
  2. 脂肪の量と質
    • 皮下脂肪が多い方:重たい脂肪組織を支える必要があるため、持続性と強度に優れるPCLのモルディングコグが第一選択になることが多いです。
    • 脂肪が少なくコケが目立つ方:PCLでリフトアップしつつ、ボリュームを補うためにPLLAを併用する、といったコンビネーション治療が効果的です。
  3. たるみの方向(ベクトル)
    • たるみは、単純に「下」に落ちるだけではありません。斜め下、前方、など人によってたるむ方向(ベクトル)が異なります。医師はそのベクトルを見極め、最も効率的に引き上げられる位置(アンカーポイント)に、最適な強度の糸を挿入します。
  4. ライフスタイルとダウンタイムの許容度
    • 「大事なイベントが1週間後にある」という方には、腫れや引きつれが出やすい強力なリフトは行わず、肌質改善がメインのPDOやショッピングリフトを提案します。「2週間は休める」という方には、PCLやPLLAでしっかりと引き上げる治療が可能です。

【医師による使い分けの具体例】

ケース1:40代女性・頬下部のもたつきと、ほうれい線が悩み

  • 分析:皮下脂肪は標準的だが、皮膚の弾力が失われ始めている。たるみのベクトルは斜め下方向。
  • 提案PCLのモルディングコグ糸を、耳前から頬下部にかけて挿入し、もたついた脂肪組織をしっかりと斜め上に引き上げる。さらに、ほうれい線の上部(頬)にはPLLAの糸を入れ、コラーゲン生成を促し、内側からふっくらさせることで影を目立たなくさせる。

ケース2:30代後半女性・フェイスラインはシャープだが、肌全体のハリがなく、乾燥小じわが気になる

  • 分析:明らかなたるみ(下垂)はない。皮膚が薄く、弾力低下(ハリ不足)が主症状。
  • 提案:コグ付きの糸リフトは不要。PDOのショッピングリフトを、頬全体とフェイスラインにかけて100本程度挿入する。物理的に引き上げるのではなく、広範囲にコラーゲン生成を促すことで、肌全体の密度を高め、ハリとツヤを改善する。

このように、医師は「素材」「コグの形状」「本数」「挿入する層(深さ)」を複雑に組み合わせて、その人にとっての最適解を導き出しているのです。

9. 進化を続ける最新の糸リフト事情

糸リフトの技術は、まさに日進月歩です。数年前に主流だった糸が、今ではほとんど使われなくなることも珍しくありません。メーカー各社は、より安全で、より効果が高く、より持続する糸を開発するために、日々研究を重ねています。

ここでは、近年の糸リフトの進化の方向性についてご紹介します。

1. ハイブリッド素材の登場

「PDOの肌質改善効果」と「PCLの持続性」、両方のメリットを享受したい、というニーズに応えるため、複数の素材を組み合わせた「ハイブリッド糸」が登場しています。
例えば、糸の内部(芯)は持続性の高いPCLで作り、その周囲をコラーゲン生成力の高いPLLAやPDOでコーティングする、といったものです。これにより、術直後のハリ感と、長期的な持続性の両立を狙います。

2. 形状(コグ)のさらなる進化

リフトアップ力を高めるため、コグの形状も複雑化しています。

  • 3Dメッシュ構造:糸自体がメッシュ(網目)状になっており、挿入後に自分の組織がメッシュ内に入り込むことで、より強固な固定とコラーゲン生成を促すタイプ。
  • 双方向・多方向コグ:一方向にしかトゲがなかった従来型と異なり、様々な方向にトゲが付いていることで、皮下組織を360度から掴み、より強力にリフトアップするタイプ。

3. 素材+α(薬剤の添加)

糸の素材(PCLやPLLA)に、さらにコラーゲン生成をブーストする薬剤(PLLAの微粒子など)を練り込んだり、コーティングしたりする技術も開発されています。これは、糸が溶けた後も、残った薬剤が継続的に肌を刺激し、コラーゲン生成を持続させることを目的としています。

項目 従来の糸リフト 最新の糸リフト(進化の方向性)
素材 PDO, PLLA, PCL の単一素材 ハイブリッド素材(例:PCL + PLLA)
コグ形状 カッティングタイプ(一方向)が主流 モルディングタイプ、3Dメッシュ、多方向コグ
付加価値 素材そのものの効果(コラーゲン生成) 薬剤の添加(コラーゲンブースターなど)

ただし、ここで注意が必要です。「最新=すべての人にとって最良」とは限らない、ということです。新しい糸は、それだけ長期的な安全性データが少ないという側面もあります。一方、PDOのような古くからある素材は、その安全性と効果が完全に確立されています。

最新の技術に飛びつくだけでなく、ご自身の肌質や悩みに、確立された定番の技術(PDO, PLLA, PCL)が最適であるケースも多々あります。その見極めこそが、医師の腕の見せ所なのです。

10. カウンセリング前に知っておきたい糸の基礎知識

ここまで読み進めていただいたあなたは、糸リフトに関するかなりの専門知識を身につけられたはずです。PDO、PLLA、PCLの違い、そしてコグの重要性。これらを理解しているかどうかで、カウンセリングの質は天と地ほどの差が出ます。

医師の提案をただ待つのではなく、「ご自身の希望を明確に伝え、医師と対等に議論する」ために、最後の準備をしましょう。

「なんとなく、たるみを上げたい」と伝えるだけでは、医師も「では、一番スタンダードなこの糸でやりましょう」という平均的な提案しかできません。

そうではなく、「私は持続期間を最優先したいのでPCLに興味があります。ただ、肌のハリも欲しいのですが、PLLAを組み合わせることは可能ですか?」と質問できれば、医師も「なるほど、それならこういう方法がありますよ」と、より一歩踏み込んだ、あなたのためだけの提案がしやすくなります。

カウンセリングで後悔しないために、ご自身の希望を整理し、以下のポイントを具体的に質問することをおすすめします。

カウンセリングで確認すべき質問リスト
1. 素材についての質問 「先生が私の肌(たるみ)に推奨する糸の素材は、PDO・PLLA・PCLのうちどれですか? また、なぜその素材を選ぶのか理由を教えてください。」
2. コグ(形状)についての質問 「使用する糸のトゲ(コグ)は、どのような形状ですか?(例:モルディングタイプなど) 私のたるみを引き上げるのに十分な強さがありますか?」
3. デザインと本数についての質問 「具体的に、顔のどの部分からどの方向へ、何本挿入する計画ですか? それによって、どのようなたるみが改善されますか?」
4. 持続期間とダウンタイムの確認 「その施術で期待できるリフトアップ効果の持続期間は、現実的にどのくらいですか? また、ダウンタイム(腫れ、内出血、引きつれ感)は、どの程度を想定すべきですか?」
5. リスクと併用療法の確認 「考えられるリスクや合併症(違和感、凸凹、感染など)について教えてください。また、ショッピングリフトや他の治療を併用した方が良い場合、それはなぜですか?」

これらの質問をすることで、医師がどれだけ深く糸リフトについて熟知しているか、そしてあなたの悩みに真剣に向き合ってくれているかを見極める材料にもなります。自信を持って、ご自身の希望をぶつけてみてください。

最適な素材(PDO・PLLA・PCL)の選択が、糸リフト成功の鍵

ここで、糸リフトの種類と選び方について、重要なポイントを整理します。

糸リフトの効果を決定づける要因は、大きく分けて「素材」と「形状(コグ)」の2つです。素材には主にPDO・PLLA・PCLの3種類があり、それぞれ吸収速度とコラーゲン生成能力が異なります。

  • PDO:吸収が早く(約半年~1年)、肌のハリ・ツヤ改善に優れる。
  • PLLA:吸収は中程度(約1年半~2年)で、強力なコラーゲン生成とボリュームアップが特徴。
  • PCL:吸収が最も遅く(約2年~3年)、最長の持続期間と柔軟性を誇る。

一方で、物理的なリフトアップ力そのものは、糸についている「トゲ(コグ)」の形状(モルディングタイプなど)が担っています。ご自身の悩みが「たるみの引き上げ」なのか「肌質の改善」なのか、あるいは「持続期間」なのか、優先順位を明確にすることが、最適な糸を選ぶための鍵となります。

これらの知識を武器に、次の具体的な行動に移してみてください。

  1. まずは鏡の前で、ご自身の顔を冷静に観察し、「持続期間を最優先にしたい(→PCLか?)」「ハリ感も強力に欲しい(→PLLAか?)」など、譲れない希望の優先順位を紙に書き出してみてください。
  2. カウンセリングを予約する際は、今日学んだ素材名(PDO, PLLA, PCL)を使い、「PCLの糸について詳しく聞きたいのですが」と、具体的に質問してみましょう。それだけで、クリニック側の対応や、医師の説明の深さが変わってくるはずです。

糸リフトは、医師の技術はもちろんのこと、使用する「糸」の特性を患者様自身が正しく理解し、医師と最適なゴールを共有することで、その効果を最大化できる施術です。ご自身の希望を明確に伝え、納得のいく施術を選択してください。

関連記事はこちら:一生付き合うほうれい線。5年後、10年後も若々しくいるための全戦略

美容医療は 「自己肯定感を高めるための選択肢のひとつ」 という信念の もと、一人ひとりの美しさと真摯に向き合う診療スタイルを貫いています。現在は、アジアの美容外科医との技術交流や教育にも力を入れ、国際的なネットワークづくりにも取り組んでいます。

  • <所属学会>

  • 日本美容外科学会JSAS

  • 日本美容外科学会JSASPS

  • 日本形成外科学会

  • 乳房オンコプラスティック

  • <資格>

  • 日本外科学会専門医

  • コンデンスリッチファット療法認定医

  • Total Definer by Alfredo Hoyos 認定医

  • VASER Lipo 認定医

  • RIBXCAR 認定医

【監修医師】

Casa de GRACIA GINZA / GRACIA Clinic 理事長 美容外科医・医学博士 樋口 隆男 Takao Higuchi

18年間にわたり呼吸器外科医として臨床に携わり、 オーストラリアの肺移植チームでの勤務経験も持つ。外科医としての豊富な経験を土台に、10年前に美容外科へ転向。現在は東京・銀座と福岡に美容クリニックを展開し、これまでに10,000例以上の脂肪吸引、4,000例を超える豊胸手術を手がけている。特にベイザー脂肪吸引、ハイブリッド豊胸、脂肪注入豊尻、肋骨リモデリング(RIBXCAR)、タミータック、乳房吊り上げなどのボディデザインを得意とし、自然で美しいシルエットづくりに国内外から定評がある。