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2026.1.14
ほうれい線へのヒアルロン酸注入|効果・費用・ダウンタイムの全て

鏡を見るたびに深くなる、鼻の横から口元にかけて刻まれた「ほうれい線」。これが目立つだけで、一気に老けた印象や疲れた印象を与えてしまうため、美容医療の現場でも最も多い悩みのひとつです。「ヒアルロン酸注入が良いとは聞くけれど、本当に効果があるの?」「顔がパンパンになったり、不自然になったりしない?」「費用は?ダウンタイムは?」——こうした疑問や不安から、一歩を踏み出せない方も少なくありません。

私自身、SEOライターとして美容医療に長年携わる中で、数多くの症例や医師の知見に触れてきました。その経験から断言できるのは、ほうれい線へのヒアルロン酸注入は、正しい知識を持って適切な施術を受ければ、最も満足度の高い治療の一つであるということです。しかし、その一方で、注入する「場所」や「量」、「製剤」の選び方を間違えると、かえって不自然な結果を招きやすい、非常に奥深い施術でもあります。

ここでは、単なる施術の紹介に留まらず、なぜヒアルロン酸がほうれい線に効くのかという医学的な仕組みから、効果の持続期間、費用の実態、そして絶対に失敗しないためのポイントまで、プロの視点から徹底的に解説します。施術を受けるかどうか迷っている方も、すでに受けると決めている方も、後悔のない選択をするための一助となれば幸いです。

1. ヒアルロン酸注入がほうれい線に効く仕組み

ほうれい線治療について考えるとき、多くの人が陥りがちな誤解があります。それは、「ほうれい線=シワ」という認識です。もちろん、乾燥や表情のクセによる皮膚表面の「浅いシワ」もありますが、年齢とともにはっきりしてくるほうれい線の正体の多くは「シワ」ではなく、頬の組織がたるんで生じる「溝」や「影」なのです。

想像してみてください。テントを支える柱が低くなったり、布自体が伸びてしまったりすると、テントの表面にたるみや溝ができますよね。顔も同じです。ほうれい線が深くなる主な原因は、皮膚そのものの問題だけではなく、その土台となる部分の変化にあります。

ほうれい線の主な原因

  1.  骨格の変化(土台の減少):年齢とともに頬骨や上顎の骨が痩せて萎縮し、皮膚を支える土台が低くなります。
  2.  皮下脂肪の減少と下垂:頬の高い位置にあった脂肪(メーラーファットなど)が減少し、さらに重力によって下垂します。
  3. 支持組織のゆるみ:皮膚と骨をつなぎとめている靭帯(リガメント)が緩み、組織全体を支えきれなくなります。
  4.  皮膚の弾力低下:コラーゲンやエラスチンの減少により、皮膚自体のハリが失われ、たるみやすくなります。

ヒアルロン酸注入は、まさにこの「失われた土台」や「深くなった溝」に対して、直接アプローチできる治療です。ヒアルロン酸という、もともと体内にある保水・弾性成分をジェル状にした製剤を注入することで、2つの効果を発揮します。

  1. 充填効果(溝を埋める):ほうれい線の溝の直下にヒアルロン酸を注入し、皮膚を内側から持ち上げて浅くする、最も直接的な方法です。
  2. リフティング効果(土台を支える):ほうれい線の原因となっている頬のコケや、緩んだ靭帯の周辺に硬めのヒアルロン酸を注入し、土台(柱)として再構築することで、頬全体をリフトアップさせ、結果的にほうれい線を目立たなくさせます。

私の経験上、熟練した医師ほど、1の「溝を埋める」アプローチは最小限にし、2の「土台を支える」リフティング効果を重視します。なぜなら、溝だけをパンパンに埋めると、顔が平面的になり、いわゆる「ヒアル顔」と呼ばれる不自然な仕上がりになりやすいからです。ほうれい線の根本原因である頬のたるみを改善することが、自然な若返りの鍵となります。

ほうれい線の原因タイプ 主な症状 ヒアルロン酸によるアプローチ
皮膚のたるみ・シワ 年齢とともに皮膚のハリがなくなり、浅い線が目立つ。 柔らかめのヒアルロン酸を皮膚の浅い層に注入し、溝を埋める(充填)。
脂肪の下垂 頬の脂肪が下がり、ほうれい線の上に乗っかるように見える。 頬の高い位置やこめかみに注入し、顔全体を引き上げる(リフティング)。
骨格の萎縮 頬骨が低くなり、中顔面が平面的になって影ができる。 骨の上に硬めのヒアルロン酸を置き、失われた土台を補う(リフティング)。

関連記事:ほうれい線のよくある質問10選|専門家があなたの疑問をすべて解決

2. 期待できる効果と持続期間

ほうれい線にヒアルロン酸を注入する最大のメリットは、その即時性です。施術直後から、鏡を見て「あ、浅くなってる」と実感できるケースがほとんどです。これは、注入されたヒアルロン酸製剤が物理的に皮膚を持ち上げるためです。

期待できる主な効果は以下の通りです。

  • ほうれい線の溝が浅くなる:最も直接的な効果です。深く刻まれた影が薄くなることで、若々しい印象になります。
  • 中顔面のリフトアップ:頬の高い位置に注入した場合、頬全体が引き上がり、疲れた印象が改善されます。
  • 肌のハリ・ツヤ改善:注入されたヒアルロン酸は高い保水力を持つため、周辺の皮膚組織に潤いを与え、肌質の改善も期待できます。
  • 口元の印象改善:ほうれい線が深いままだと、不機嫌そうに見えたり、口元が下がって見えたりすることがあります。これを改善することで、表情全体が明るくなります。

では、この効果はどれくらい続くのでしょうか。よく「ヒアルロン酸は半年でなくなる」と言われることがありますが、これは製剤の種類によります。ヒアルロン酸の持続期間は、製剤の「硬さ」と「架橋技術」によって大きく異なります。

架橋(かきょう)とは、ヒアルロン酸の分子同士を繋ぎ合わせ、体内で分解されにくくする技術のことです。この架橋がしっかりしている硬い製剤ほど、分解・吸収が遅くなり、持続期間が長くなります。

【私の分析】
持続期間が長ければ長いほど良い治療だと思われがちですが、一概にそうとは言えません。例えば、非常に硬く長持ちする製剤を皮膚の浅い層に注入すると、表情を動かしたときに凸凹したり、不自然な「しこり感」が出たりするリスクがあります。

逆に、柔らかい製剤は持続が短いものの、皮膚によく馴染み、非常に自然な仕上がりになります。私の経験では、医師は「自然な仕上がり」と「持続期間」のバランスを常に考えており、注入する部位や層によって、複数の製剤を使い分けることが一般的です。

ヒアルロン酸製剤のタイプ 特徴 持続期間の目安 ほうれい線への主な使用法
柔らかい製剤 粒子が細かく滑らか。皮膚の浅い層によく馴染む。 約6ヶ月~1年 ほうれい線の溝そのもの(皮膚直下)に注入し、浅いシワを埋める。
中程度の硬さの製剤 適度な硬さと成形力がある。汎用性が高い。 約1年~1年半 ほうれい線のやや深い部分への充填や、軽度のリフトアップに使用。
硬い製剤 粒子が大きく硬い。リフトアップ力(組織を支える力)が強い。 約1年半~2年 頬骨の上など骨膜上に注入し、失われた土台を補いリフトアップする。

3. 施術の流れとカウンセリングの重要性

ヒアルロン酸注入の施術自体は、非常にスピーディーです。しかし、その短い施術時間で満足のいく結果を出すためには、施術前の「カウンセリング」と「デザイン」が全工程の9割を占めると言っても過言ではありません。

一般的な施術の流れを見てみましょう。

  1. 予約・来院:まずはクリニックに予約し、来院します。
  2. 問診票の記入:アレルギー歴、既往歴、現在の内服薬などを記入します。
  3. クレンジング・洗顔:正確な肌状態を診察するため、メイクを落とします。
  4. カウンセリング・診察:医師がほうれい線の状態(深さ、原因)を診断します。ここが最重要です。
  5. デザイン:鏡を見ながら、医師と仕上がりイメージを共有し、注入箇所や量を決定します。
  6. 麻酔:希望に応じて、表面麻酔クリームを塗布します(約20~30分)。
  7. 注入施術:デザインに基づき、ヒアルロン酸を注入します。実際の注入時間は5~15分程度です。
  8. アフターケア説明:施術後の注意事項(飲酒、運動の制限など)の説明を受け、帰宅します。

【私の経験談】
私が多くの医師から聞く「失敗」の多くは、このカウンセリングでの「すり合わせ不足」から生じています。患者様が「ほうれい線を消したい」とだけ伝え、医師が言われるがままに溝だけを埋めた結果、「理想と違う」「顔がパンパンになった」というケースです。

良いカウンセリングとは、単に「ヒアルロン酸を打ちましょう」と決める場ではありません。

  • あなたのほうれい線が、なぜ深く見えるのか(原因の診断)
  • それを改善するために、どこに、どのくらいの量、どの硬さの製剤を注入すべきか(治療計画)
  • その結果、どのような変化が期待でき、どのようなリスクがあるか(ゴールとリスクの共有)

これらを、医師と患者様が共通の認識を持つための時間です。

「お任せします」は、信頼の証のように聞こえますが、美容医療においては危険な言葉です。必ずご自身の希望—「こういう顔になりたい」「こういう風になるのは嫌だ」—を具体的に伝えてください。そして、医師がそれに対して、解剖学的に「できること」と「できないこと(やらない方がいいこと)」を明確に説明してくれるかどうかを見極める必要があります。

カウンセリングでの必須確認事項 具体的な質問例 なぜ重要か
原因の診断 「私のほうれい線の一番の原因は、皮膚ですか? 骨ですか? たるみですか?」 原因によって最適な注入法(製剤・層)が全く異なるため。
注入デザイン 「ほうれい線の溝自体に打ちますか? それとも頬を引き上げるために打ちますか?」 「溝だけ埋める」デザインは、不自然になりやすいため。
使用製剤と量 「使用するヒアルロン酸の名前と、その特徴(硬さ・持続)を教えてください。」「合計で何cc注入する予定ですか?」 料金の透明性と、仕上がりイメージ(量)を把握するため。
リスクと緊急時対応 「万が一、血管塞栓が起きた場合の対応はどうなっていますか?」「溶かす薬(ヒアルロニダーゼ)は常備していますか?」 クリニックの安全管理体制を確認するため。

4. ダウンタイムはどのくらい?腫れや内出血の実際

ヒアルロン酸注入は「ダウンタイムがほとんどない」と言われることが多い施術です。確かに、メスを使う手術とは異なり、施術当日からメイクをして帰宅できることがほとんどです。しかし、「ダウンタイムがゼロ」というわけでは決してありません。

針を皮膚に刺す以上、以下のような症状が起こる可能性は誰にでもあります。これを理解しておくことで、術後に慌てずに済みます。

1. 腫れ・むくみ
注入直後は、麻酔やヒアルロン酸製剤そのものの影響で、やや腫れぼったく感じることがあります。また、ヒアルロン酸は保水性が高いため、術後2~3日、水分を含んで少しむくむ感じが出ることも。多くの場合、1週間程度で馴染んで自然になります。

2. 内出血
これがダウンタイムの主な症状です。顔には無数の毛細血管が走っており、どれだけ慎重に注入しても、針先が血管に触れてしまうと内出血が起こります。

  • 程度:小さな点状のものから、やや広範囲に青紫色になるものまで様々です。
  • 経過:直後よりも1~2日経ってから色が濃く出ることがあります。その後、黄色っぽく変化しながら、通常1~2週間かけてゆっくりと吸収され消えていきます。
  • 対処:コンシーラーで隠せる程度がほとんどです。

3. 痛み・違和感
施術当日は麻酔が切れるとジンジンとした軽い痛みを感じることがありますが、鎮痛剤を飲むほどではないことが大半です。また、注入した部位(特に硬い製剤を使った場合)は、数日~数週間、触ったり表情を動かしたりすると、軽い圧痛や「何か入っている」ような違和感を覚えることがありますが、時間とともに必ず馴染んでいきます。

【私の経験談】
内出血のリスクを最小限に抑えるために、最近では「マイクロカニューレ」という、先端が丸く横から薬剤が出る特殊な針(鈍針)を使用するクリニックが主流です。鋭い針(鋭針)と違って血管を傷つけにくいため、内出血の発生率を劇的に下げることができます。個人的には、ほうれい線のような広範囲に注入する場合は、マイクロカニューレの使用を強く推奨します(クリニックによってはオプション料金の場合あり)。

ダウンタイムの現実として、「大事な予定(結婚式や同窓会など)の1週間前」といった直前の施術は避けるべきです。内出血が万が一濃く出た場合、消えるまでに2週間かかる可能性も考慮し、予定の最低でも2~3週間前には施術を済ませておくのが賢明です。

ダウンタイムの主な症状 ピークと期間の目安 一般的な対処法
内出血 術後1~3日で色が濃くなり、1~2週間かけて消退。 コンシーラーやマスクで隠す。術後24時間以降は、軽く温めると吸収が早まるとも言われる(医師の指示に従う)。
腫れ・むくみ 術直後~3日間がピーク。1週間程度で馴染む。 術直後は保冷剤などで軽く冷やす。飲酒や長風呂、激しい運動を避ける。
痛み・圧痛 施術当日~3日程度。圧痛は1~2週間続くことも。 我慢できない痛みは稀。気になる場合はクリニックに相談。

関連記事はこちら:一生付き合うほうれい線。5年後、10年後も若々しくいるための全戦略

5. 注入時の痛みと麻酔について

「注射」と聞くと、やはり気になるのが「痛み」ですよね。ほうれい線へのヒアルロン酸注入で感じる痛みは、大きく分けて2種類あります。

  1. 針が刺さる瞬間の痛み(チクッとする痛み)
  2. 製剤が組織内に入ってくる痛み(押されるような鈍い痛み)

痛みの感じ方には非常に個人差がありますが、「インフルエンザの予防接種より痛くなかった」「我慢できる程度の痛み」と表現される方が多いです。特にほうれい線周辺は、他の部位(例えば唇や額)に比べて皮膚が厚く、痛みを感じにくい傾向があります。

それでも痛みが心配な方のために、ほとんどのクリニックでは様々な麻酔が用意されています。

■ 表面麻酔(麻酔クリーム)
最も一般的な麻酔です。施術前に、注入部位に麻酔成分(リドカインなど)が含まれたクリームを塗り、ラップで密閉して20~30分待ちます。これにより、皮膚表面の感覚が鈍くなり、1の「針が刺さる痛み」を大幅に軽減できます。

■ 笑気麻酔
鼻から亜酸化窒素と医療用酸素を混合したガスを吸入する麻酔です。リラックス効果が非常に高く、お酒に酔ったような、フワフワとした心地よい感覚になります。「痛み」そのものを消すわけではありませんが、恐怖心や不安感を和らげるのに絶大な効果があります。痛みに極端に弱い方、緊張しやすい方におすすめです。

■ 神経ブロック注射
ほうれい線の近くにある神経の根本(眼窩下孔など)に局所麻酔薬を注射し、広範囲の感覚を麻痺させる方法です。歯医者さんの麻酔に近いです。効果は強力ですが、このブロック注射自体が痛むことや、術後に数時間、表情が動かしにくくなるため、ほうれい線注入で選択されることは稀です。

【私の分析】
最近のヒアルロン酸製剤の進化は目覚ましく、製剤自体に麻酔薬(リドカイン)が含まれている製品が主流になっています。

これにより、最初の針が刺さる瞬間(これは表面麻酔でカバー)を乗り越えれば、製剤が注入されると同時に麻酔が効き始めるため、2の「製剤が入る痛み」はほとんど感じないか、非常に軽度で済むようになりました。

個人的な見解としては、標準的な痛みの耐性がある方なら「表面麻酔」+「麻酔薬入りヒアルロン酸製剤」の組み合わせで十分対応可能です。極度に痛みが怖い方だけ、オプションで「笑気麻酔」を追加すると万全でしょう。

6. 自然な仕上がりになるためのポイント

ほうれい線へのヒアルロン酸注入で、最も避けたい結果は「不自然な仕上がり」です。テレビや街中で、明らかに「何か入れている」と分かるような、顔がパンパンに膨らんだ人を見かけたことはないでしょうか。

なぜ、あのような結果になってしまうのか。
それは、「ほうれい線の溝を、完全に消し去ろうとする」からです。

私の経験上、自然な仕上がりを実現する熟練の医師たちは、以下の鉄則を守っています。

1. 「ほうれい線」ではなく「原因」に注入する
前述の通り、ほうれい線の原因は頬のたるみやコケです。溝だけを埋めようとすると、口元だけが不自然に盛り上がり、「ブルドッグ」のようになってしまいます。

自然な仕上がりの鍵は、中顔面(頬)へのアプローチです。頬骨の上や、こめかみ、頬のコケている部分に硬めのヒアルロン酸を注入し、顔全体の骨格を補強するようにリフトアップさせます。土台が持ち上がれば、ほうれい線の溝は自然と浅くなります。その上で、最後に残った浅い影に、ごく少量の柔らかいヒアルロン酸を足す程度。この「主役は頬、ほうれい線は脇役」という考え方が、決定的に重要です。

2. 「消す」のではなく「目立たなくする」を目指す(注入量の適正化)
ほうれい線は、骨格上、笑ったり話したりすれば誰にでもできるものです。これを「シワ一つない状態」にしようとすると、必ず入れすぎ(Overfill)になります。

ゴールは「真顔の時に、影として深く刻まれて見えない状態」にすること。80%~90%の改善を目指し、あえて「少し残す」くらいの余裕を持つことが、自然な表情を保つコツです。「もう少し入れたい」という患者様の要望に対し、「これ以上は不自然になるから」とストップをかけられる医師こそ、信頼できる医師だと私は考えます。

3. 適切な「製剤」と「層(深さ)」を選ぶ
皮膚のすぐ浅くに硬い製剤を入れると、表情を動かしたときに凸凹が目立ちます。逆に、土台を作るべき骨の上に柔らかい製剤を入れても、すぐに吸収されて効果が出ません。

  • リフトアップ(土台):硬い製剤を、骨膜上などの「深い層」に。
  • 溝を埋める(充填):柔らかい製剤を、皮下組織などの「浅い層」に。

この使い分けができていないと、仕上がりが不自然になるだけでなく、後述するリスク(チンダル現象など)の原因にもなります。

参考ページ:1日3分で変わる!ほうれい線を薄くする顔ヨガ&マッサージ完全版

7. ほうれい線注入の失敗例とリスク

ヒアルロン酸注入は手軽な施術ですが、医療行為である以上、リスクや失敗の可能性はゼロではありません。どのようなことが起こり得るのかを事前に知っておくことは、それらを回避するために不可欠です。

【よくある失敗例(軽度~中等度)】

  • 入れすぎてパンパンになる:最も多い失敗です。特にほうれい線の溝だけを埋めようとした場合に起こりがちです。
  • 左右非対称になる:もともとの骨格の左右差を考慮せずに注入すると、非対称が強調されることがあります。
  • 凸凹・しこり感:製剤の選択ミス(浅い層に硬い製剤)や、注入量が均一でない場合に起こります。
  • 青白く透けて見える(チンダル現象):皮膚の浅すぎる層にヒアルロン酸を注入すると、光の反射で製剤が青っぽく透けて見える現象です。目の下などに多いですが、ほうれい線でも起こり得ます。

これらの失敗の多くは、医師のデザイン力や技術力不足が原因です。幸いなことに、ヒアルロン酸には「ヒアルロニダーゼ」という分解酵素(溶解注射)があります。万が一、仕上がりが気に入らない場合や、凸凹が生じた場合でも、ヒアルロニダーゼを注射することで、注入したヒアルロン酸を溶かして元に戻すことが可能です。これは他の注入剤(コラーゲンやレディエッセなど)にはない、ヒアルロン酸の最大の強み(安全性)です。

【重大なリスク(非常に稀だが重要)】

■ 血管塞栓(けっかんそくせん)
最も重篤な合併症です。注入したヒアルロン酸製剤が誤って動脈に入り込み、血流を塞き止めてしまう状態です。ほうれい線の周辺には顔面動脈などが通っており、リスクの高い部位の一つです。

  • 症状:注入直後からの激しい痛み、皮膚の色がまだらに白っぽくなる、数日後に水疱や黒ずみ(皮膚壊死)が起こる。
  • 失明:さらに稀ですが、塞栓が目の動脈にまで及ぶと失明に至るケースも報告されています。

【私の経験から】
血管塞栓は、発生頻度は極めて稀(数万人に一人とも)ですが、起きた場合の被害が甚大です。これを防ぐため、医師は顔の解剖学(血管や神経の走行)を熟知している必要があります。

クリニック選びの絶対条件として、「血管塞栓のリスクをきちんと説明してくれること」そして「万が一、塞栓が疑われた場合に、即座に対応できる体制(ヒアルロニダーゼの常備、連携病院の確保)があること」を確認してください。

リスク・失敗例 主な原因 回避策・対処法
不自然な膨らみ(入れすぎ) 溝を消そうと過剰に注入。リフトアップを考慮しないデザイン。 注入量を適正に保つ。ヒアルロニダーゼで溶かす。
凸凹・しこり 浅い層への硬い製剤の注入。注入技術のムラ。 適切な製剤・層を選ぶ。注入後マッサージで馴染ませる。溶かす。
チンダル現象(青く透ける) 皮膚の浅すぎる層(真皮内)への注入。 適切な層(皮下組織)に注入する。ヒアルロニダーゼで溶かす。
血管塞栓(皮膚壊死・失明) 製剤が動脈内に誤注入され、血流が途絶える。 解剖学の熟知。マイクロカニューレの使用。異変時(激痛)は即申告。即時ヒアルロニダーゼで大量溶解。

参考:ほうれい線に効くクリーム&美容液はこれ!選び方と効果的な使い方

8. 費用相場とクリニックの選び方

ヒアルロン酸注入の費用は、クリニックによって大きな幅があります。料金設定は主に以下の2パターンに分かれます。

  1. 製剤1本(通常1.0cc)あたりの料金
  2. 「ほうれい線」など部位ごとの料金

ほうれい線の治療に必要な注入量は、その深さやアプローチ(リフトアップを含むか)によって異なりますが、一般的に両側で1cc~3cc程度を見込むことが多いです。

■ 費用相場(1ccあたり)
ヒアルロン酸製剤は、メーカーや持続期間によって原価が異なります。

  • 持続が短い(約半年~1年)製剤:1ccあたり 50,000円~ 80,000円程度
  • 持続が長い(約1年半~2年)製剤:1ccあたり 80,000円~140,000円程度

【私の分析】
なぜこれほど価格に差があるのでしょうか。それは「製剤の原価」だけでなく、「医師の技術料」が大きく反映されているからです。

極端に安いクリニック(例:1cc 20,000円など)には注意が必要です。その理由として、

  • 安全基準が不明確な、非常に安価な(持続の短い)製剤を使用している可能性。
  • 経験の浅い医師が「経験を積むため」に担当している可能性。
  • 「ほうれい線」で安く集客し、高額な糸リフトや他の施術を強く推奨する(アップセル)目的の可能性。

が考えられます。ヒアルロン酸注入は、医師の技術とセンスが仕上がりを左右する「職人技」です。安さだけで選ぶのは、失敗への近道となり得ます。

では、何を基準にクリニックを選べばよいのでしょうか。価格以上に重要な、失敗しないためのチェックポイントをまとめます。

クリニック選びの比較ポイント チェックするべきこと なぜ重要か
医師の専門性と経験 医師が解剖学を熟知しているか(形成外科専門医など)。ヒアルロン酸注入の指導医か。 血管塞栓などのリスクを回避し、自然なデザインを提案できるため。
症例写真の自然さ 症例写真が、自分と似た年齢・骨格か。仕上がりがパンパンでなく「自然に若返っている」か。 その医師の「美的センス」が、自分の好みと合っているかを確認するため。
カウンセリングの質 医師が鏡を見ながら丁寧に診察し、原因を説明してくれるか。リスク説明が十分か。 仕上がりのゴールを共有できなければ、満足のいく結果は得られないため。
製剤の選択肢 複数のメーカー・硬さのヒアルロン酸製剤を取り扱っているか。 1種類の製剤しかないと、あらゆる部位にそれを無理に使うことになり、不自然さの原因になる。
安全・緊急時対応 ヒアルロニダーゼ(溶解注射)を常備しているか。マイクロカニューレは使用可能か。 安全への配慮が、クリニックの信頼性を測るバロメーターになる。

9. ヒアルロン酸注入以外のほうれい線治療との比較

ほうれい線治療は、ヒアルロン酸注入だけではありません。たるみの原因や程度によっては、他の治療法が適している、あるいは組み合わせた方が良い場合があります。

ヒアルロン酸は、失われたボリュームを「足す(充填)」治療です。

対して、HIFU(ハイフ)糸リフト(スレッドリフト)は、たるんだ組織を「引き締める・引き上げる」治療です。

【私の分析】
ここで重要なのは、これらの治療法は「どれが一番優れているか」ではなく、「あなたのほうれい線の原因に、どれが合っているか」です。

例えば、頬の脂肪が多く、たるみが強い方(ほうれい線の上に肉が乗っているタイプ)が、ヒアルロン酸注入だけで解決しようとすると、どうなるでしょうか。ただでさえ重たい組織にさらにヒアルロン酸の重さが加わり、余計にたるんで見えたり、顔がパンパンに膨らんだりするリスクがあります。

この場合、まずはHIFUで脂肪層を引き締める、あるいは糸リフトで組織を物理的に引き上げた上で、それでも残る「影」や「コケ」に対して、少量のヒアルロン酸で補正するのが、最も自然で効果的なアプローチとなります。

美容医療の現場では、こうしたコンビネーション治療(複数の施術の組み合わせ)が、最良の結果を出すための鍵として常識となっています。

治療法 アプローチ ダウンタイム 持続期間目安 特に向いている人
ヒアルロン酸注入 足す(充填)
溝を埋め、土台を補強する。
ほぼ無し~数日(内出血) 半年~2年 頬がコケている人。溝が深い人。即時効果が欲しい人。
HIFU(ハイフ) 引き締める
超音波でSMAS筋膜や脂肪層を熱凝固させ、引き締める。
ほぼ無し(軽い筋肉痛程度) 半年~1年 脂肪が多くたるんでいる人。たるみ予防をしたい人。
糸リフト(スレッドリフト) 引き上げる
トゲの付いた溶ける糸で、たるんだ組織を物理的に引き上げる。
数日~2週間(腫れ、引きつれ感) 1年~2年 たるみが強く、即時的なリフトアップを望む人。
脂肪注入 足す(充填)
自身の脂肪を採取し、注入する。
1~2週間(採取部と注入部の腫れ) 半永久(定着すれば) アレルギーが心配な人。広範囲のコケを改善したい人。
フェイスリフト(手術) 引き上げる(根本改善)
皮膚とSMAS筋膜を切開し、引き上げる。
1~3ヶ月(大きな腫れ) 5年~10年 たるみが非常に強く、根本的な改善を望む人。

10. 施術を受ける前に知っておくべき全知識

最後に、カウンセリングや施術当日に向けて、知っておくとスムーズなこと、注意すべき点をまとめます。

■ 施術当日の準備

  • メイク:施術前にクレンジングするため、メイクはして行っても問題ありません。ただし、施術直後からメイク可能ですが、注入部位(針穴)を避けて優しく行う必要があります。当日は軽めのメイクで済ませるか、メイク道具を持参するのが良いでしょう。
  • 服装:特に指定はありませんが、リラックスできる服装がおすすめです。
  • 体調:寝不足や風邪気味など、体調が万全でないと、痛みを感じやすかったり、内出血が出やすくなったりすることがあります。体調の良い日を選んでください。

■ 施術後の過ごし方(重要)
注入したヒアルロン酸が組織に馴染み、デザインが定着するまでには少し時間がかかります。術後の過ごし方が、仕上がりを左右することもあります。

【術後24時間~3日間(特に注意)】

  • 飲酒:血行が良くなると、腫れや内出血が強く出る原因になります。最低24時間、できれば3日間は控えてください。
  • 激しい運動・長風呂・サウナ:飲酒と同様の理由で、血流を促進する行為は避けてください。シャワーは当日から可能です。
  • 注入部位の圧迫・マッサージ絶対に強く押したり、揉んだりしないでください。注入したヒアルロン酸が移動し、デザインが崩れる原因になります。洗顔やメイクも、優しく触れる程度にしてください。

【術後1~2週間】

  • 顔のマッサージ:エステや美顔器など、顔に強い圧力をかける行為は、最低2週間は避けてください。(個人的には1ヶ月避けることを推奨します)
  • うつ伏せ寝:無意識に圧迫してしまう可能性があるため、できるだけ仰向けで寝るよう意識してください。
  • 歯医者の治療:口を大きく開けたり、圧迫されたりする可能性があるため、可能であれば1~2週間空けるのが無難です。

■ アレルギーについて
現在の高品質なヒアルロン酸製剤は、非動物由来で高純度に精製されているため、アレルギー反応のリスクは極めて低いとされています。そのため、事前の皮内テスト(アレルギーテスト)は不要な場合がほとんどです。ただし、重度のアレルギー体質(特に麻酔薬リドカインのアレルギー)がある方は、必ずカウンセリングで申告してください。

後悔しないヒアルロン酸注入のための最終判断

ほうれい線へのヒアルロン酸注入は、メスを使わずに即時的な若返り効果が期待できる、非常に優れた治療法です。その仕組みは、単に「溝を埋める」だけでなく、たるみの原因となる「土台(骨格や頬のコケ)」を支え直し、顔全体を立体的にリフトアップすることにあります。

しかし、その手軽さゆえに、医師の技術やデザイン力が仕上がりに直結します。「ほうれい線を消す」ことだけを目的にすると、かえって不自然な結果を招きます。成功の鍵は、ご自身のほうれい線の原因(たるみか、コケか、骨格か)を医師と正確に共有し、「自然な範囲で目立たなくする」というゴールをすり合わせることです。

施術を受けるか迷っている方は、まず以下の2つのアクションから始めてみてください。

  1. ご自身の顔を鏡でよく観察し、「溝を埋めてほしい」のか、「頬のあたりを引き上げてほしい」のか、自分の希望を具体的に言語化してみる。
  2. 複数のクリニックの症例写真を見比べ、「完璧にシワが消えている写真」ではなく、「表情が自然で、上品に若返っている写真」を多く掲載している医師を探す。

ヒアルロン酸は「溶かせる」という大きな安心材料があります。正しい知識を持ち、信頼できる医師を選ぶこと。それが、ほうれい線の悩みを解消し、自信を取り戻すための最も確実な第一歩です。

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美容医療は 「自己肯定感を高めるための選択肢のひとつ」 という信念の もと、一人ひとりの美しさと真摯に向き合う診療スタイルを貫いています。現在は、アジアの美容外科医との技術交流や教育にも力を入れ、国際的なネットワークづくりにも取り組んでいます。

  • <所属学会>

  • 日本美容外科学会JSAS

  • 日本美容外科学会JSASPS

  • 日本形成外科学会

  • 乳房オンコプラスティック

  • <資格>

  • 日本外科学会専門医

  • コンデンスリッチファット療法認定医

  • Total Definer by Alfredo Hoyos 認定医

  • VASER Lipo 認定医

  • RIBXCAR 認定医

【監修医師】

Casa de GRACIA GINZA / GRACIA Clinic 理事長 美容外科医・医学博士 樋口 隆男 Takao Higuchi

18年間にわたり呼吸器外科医として臨床に携わり、 オーストラリアの肺移植チームでの勤務経験も持つ。外科医としての豊富な経験を土台に、10年前に美容外科へ転向。現在は東京・銀座と福岡に美容クリニックを展開し、これまでに10,000例以上の脂肪吸引、4,000例を超える豊胸手術を手がけている。特にベイザー脂肪吸引、ハイブリッド豊胸、脂肪注入豊尻、肋骨リモデリング(RIBXCAR)、タミータック、乳房吊り上げなどのボディデザインを得意とし、自然で美しいシルエットづくりに国内外から定評がある。